「自然資本」についてご紹介している住友商事のサステナビリティページです。
住友商事グループは、「住友の事業精神」や経営理念に則り、当社グループの持続的な成長と社会課題の解決を目指しています。
当社グループの事業活動は、地球上の多様な自然資本により生み出される生態系サービスに大きく依存しているとともに、インパクトを与えています。このため、当社グループの「環境方針」で明示している通り、「自然生態系等の環境保全並びに生物多様性の維持・保全に十分配慮する」ことは当社グループにとって重要な課題であると認識しています。
近年気候変動や生物多様性の損失をはじめとする自然資本を巡る課題が深刻化する中、当社グループは2024年5月にマテリアリティを更新し、「自然資本を保全・再生する」を新たに掲げました。また、昆明・モントリオール生物多様性枠組の目標年である2030年を見据え、中期目標として「2030年ネイチャーポジティブに向けた取り組みの促進」を設定しています。あわせて、この中期目標に対する理解醸成と取り組み強化を目的として、当社グループにおけるネイチャーポジティブに向けた取り組みを「事業による自然資本への影響を最小化し、自然資本の保全・再生に向けてビジネスを変革し続けていくこと」と定義しました。
当社グループは、事業がバリューチェーン全体を通じてどのように自然に依存し、インパクトを与えているのかを把握するとともに、そこから生じる事業上のリスクと機会を評価し、自然資本の保全・再生と企業価値の向上の両立を目指して取り組みを進めていきます。
| マテリアリティ | 長期目標 | 中期目標 |
|---|---|---|
| 自然資本を保全・再生する |
|
|
企業にとって水資源は欠かせない重要な自然資本である一方、人口増や経済発展に伴う水需要の増加により、水不足に陥る地域は今後ますます拡大します。経済協力開発機構(OECD)によると、世界の水需要は2000年から2050年までに55%増加し、2050年には2億4千万人が清潔な水を入手できない状況にあり、また、14億人が基本的な公衆衛生のない状況におかれると見込まれています。
水ストレスの高い地域も含む世界各地で事業を展開している当社グループは、水資源の有限性を十分認識した上で、本課題をリスクと機会の両側面で捉え、事業活動における水の使用に関し、持続可能性を追求するために、水使用の適切な管理、リサイクル・再利用の促進、適切な排水処理の徹底に努めるとともに、水インフラビジネスの展開等を通じて課題解決に取り組んでいきます。
グローバルに幅広い地域で事業を展開している住友商事グループは、環境方針で示しているとおり、環境関連法規の遵守、循環型社会構築への寄与に努めます。具体的には、排水・汚泥・排気などによる汚染防止について、法令基準の遵守のみならず、廃棄物の削減・再利用・リサイクルなどの環境負荷低減などに取り組み、持続可能な社会を実現していくことが重要だと考えており、各事業活動を通じて課題解決に取り組んでいきます。
当社は、2022年6月にTNFD(※)の理念に賛同し、その活動を支援しサポートするTNFDフォーラムに参画しました。また2024年1月には、TNFDが2023年9月に公表した開示提言を早期採用する「TNFD Early Adopter」に取締役会の決議を経て登録し、2025年9月の本開示に至りました。
TNFD提言に基づいた開示およびステークホルダーとの対話を通じて、事業による自然資本の保全・再生に向けた取り組みを加速させていきます。
6つの一般要件への対応は以下のとおりです。
当社グループの自然関連課題を含むサステナビリティ関連の多様なリスク・機会並びに依存・インパクトを踏まえた重要な経営事項の決定と、経営会議および執行役員が行う意思決定や業務執行の監督については、取締役会が責任を持って行っています。取締役会は、サステナビリティ関連を含む事業ポートフォリオ全体のリスク・機会の分析・対応状況について、少なくとも半期ごとに報告を受けています。また、個別事業で認識しているサステナビリティ関連のリスク・機会並びに依存・インパクトの分析・対応状況、モニタリング指標等についても、年次でサステナビリティ推進部より報告を受けており、経営会議等の業務執行側の取り組み状況を監督しています。
また、社内規定の定めに応じて重要な経営事項の意思決定および業務執行は、経営会議および執行役員が行っています。経営会議はサステナビリティ関連の多様なリスク・機会並びに依存・インパクトを評価・管理し、効果的な意思決定を行うため、サステナビリティ推進委員会等に諮問した上で、総合的な意思決定を行っています。

また、サステナビリティ推進委員会に対して自然関連課題を含むサステナビリティに関する助言を行う外部有識者からなるサステナビリティ・アドバイザリーボードを設置し、複雑で専門性を要する課題に関する経営の意思決定に反映させる体制としています。2024年5月の自然資本のマテリアリティへの追加や、その取り組み強化等について、サステナビリティ・アドバイザリーボードより助言を得て取り進めています。
当社グループでは取締役会・経営会議での議論を経て各種方針を定め、その方針に基づき事業運営をしています。ガバナンス体制の詳細および各種方針については当社ウェブサイト「サステナビリティ経営」および「サステナビリティ経営のガバナンス」をご参照ください。
当社グループは、広く社会に貢献するグローバルな企業グループを目指し、人間尊重を経営姿勢の基本とすることを経営理念の中で掲げています。こうした考えのもと、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」等の国際基準に則り、「人権方針」を制定しました。
当社グループは、人権尊重へのコミットメントの一環として、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」「自由意思による、事前の、十分な情報に基づいた同意(free, prior and informed consent:FPIC)」の原則などの、先住民族の権利に関する国際規範を尊重しています。また、先住民族が在住する地域での事業活動においては、先住民族が有する固有の文化や歴史を認識した上で、各国・各地域で適用される法令や環境許認可等を遵守し、先住民族および地域コミュニティへの配慮を行いながら操業しています。
高リスク事業を対象としたセクター・製品固有のリスクの整理結果等の人権デューデリジェンスの実施・進捗、個別の取り組みについては当社ウェブサイト「人権の尊重」をご参照ください。
本開示においては、バリューチェーン(以下、VC)を含む当社グループの事業全体における自然資本への依存・インパクトを把握した上で、優先セクターおよび優先事業を特定し、マテリアルな依存・インパクト、リスク・機会を評価しました。以下のプロセスに沿って、当社グループ全体の概観評価および鉱山・農業セクターにおける自然関連課題の分析結果を開示します。
過年度開示からの主な変更点:

当社グループの事業全体における自然資本への依存・インパクトの全体像を把握するため、「ENCORE」を用いて評価を実施しました。過年度は直接操業を対象として評価していましたが、今回はVCに拡大し自然への依存・インパクトを評価しました。VCに拡大した評価を行うにあたっては、過年度の評価時から「ENCORE」の評価結果が更新されているため、改めて直接操業を含む事業全体の評価を実施しています。
当社グループの事業全体を14のセクターに分類(※)の上、各事業のVCにおける事業段階を整理し評価しました。
| 過年度 | 今回 |
|---|---|
| 「住宅建設」、「建設資材生産」、「インフラ建設」 | 「建設・不動産」 |
| 「水力発電」、「地熱発電」、「太陽光発電」、「火力発電」 | 「発電」 |
ヒートマップ概観

概観評価の次に、高依存・高インパクトの事業段階をより正確に把握するため、ENCOREの評価結果を統合し、依存・インパクトの2軸の評価を実施しました。

自然へのインパクトは鉱山セクターの「採掘」および農業の「原材料生産」を筆頭に、リテイル、建設・不動産、デジタル、自動車、輸送機・建機セクターの「原材料生産」が大きいことが確認されました。
また、自然への依存は農業、林業、リテイル、アパレルセクターなどの「原材料生産」、鉱山セクターの「採掘」が大きいことが確認されました。
今回分析の対象範囲をVC全体に拡大したことにより、直接操業外のVC上でも自然への依存・インパクトが高い事業段階があることが確認されました。これらを踏まえて、VCを含む分析の必要性を認識し、後段の優先セクターのLEAP分析においてもVCを含む検討を実施しています。
ENCOREの情報をもとに直接操業の依存・インパクトが大きいと評価された鉱山・農業セクターに着目して、VC全体を含むセクターの自然関連課題の詳細評価を行いました。
セクターレベルでの依存・インパクトの検討においては、次の手順を踏みました。
① セクターレベルでの依存・インパクトの検討においては、ENCOREの評価結果のほかにTNFDセクターガイダンス、SASBスタンダードといった各種文献を参照し、鉱山・農業セクターのVC段階ごとに一般的にどのように自然に依存し、インパクトを与えているかの整理を実施しました。
② 各VC段階における直接操業国でのリスク顕在化事例の発生の有無を確認し、当社グループの操業国における実態を加味した評価に更新しました。
③依存・インパクトごとにマテリアルと判断する評価基準を設定の上、セクター・VC段階ごとのマテリアルな依存・インパクトを特定しました。なお、直接操業外のビジネスについては一般的な依存・インパクトの整理となります。
![重要なリスク・機会 [鉱山]](/img/27/ja/27_image_34.png)
◎マテリアルな依存・インパクト
○セクターとして関連性があるものの、当社グループにとって重要度が落ちると判断した依存・インパクト
赤枠:直接操業が関係する事業段階
鉱山セクターにおいては、特に開発・採掘段階において土地の開発による「土地・淡水利用の変化」や重機等による「温室効果ガス排出」、操業に必要な「水利用」、鉱滓などの「廃棄物の発生」やそれに伴う「水質汚染・土壌汚染」、「大気汚染物質の排出」、重機等の騒音・振動による「生態系のかく乱」といった様々な観点でマテリアルなインパクトが多く特定されました。また、操業に必要な「淡水供給、水流調整、水質浄化」や安定した操業に必要な「調整・維持サービス(気候の調整、洪水緩和・暴風雨の緩和、降雨パターンの調整、土壌と土砂の保持)」への依存がマテリアルであると評価されました。
![重要なリスク・機会 [農業]](/img/27/ja/27_image_35.png)
◎マテリアルな依存・インパクト
○セクターとして関連性があるものの、当社グループにとって重要度が落ちると判断した依存・インパクト
赤枠:直接操業が関係する事業段階
農業セクターにおいては、特に原材料生産段階において自然との関係性が深く、生育に必要な「淡水供給、水流調整」や「花粉媒介」への依存、植物の生育において重要な「土質調整、水質浄化」、水災・土砂災害の被害を低減するような「調整・維持サービス(気候の調整、洪水緩和・暴風雨の緩和、降雨パターンの調整、土壌と土砂の保持)」、病害虫からの保護に重要な「生物的防除」への依存がマテリアルであると評価されました。また耕作地の開発による「土地・淡水利用の変化」や「水利用」、肥料・農薬による「水質汚染・土壌汚染」や「かく乱」、「廃棄物の発生」といった観点のインパクトがマテリアルであると評価されました。
特定したマテリアルな依存・インパクトからどのような自然関連リスク・機会が発生するかを検討し、発生可能性や定性的な重要性(事業継続へのインパクト、社会・環境へのインパクト、財務的なインパクト)といった観点から、特に当社グループにとって重要なリスク・機会項目を評価・特定しました。
当社グループの直接操業が関与するそれぞれの主要なリスク・機会の要因は、以下の通りです。
![重要なリスク・機会 [鉱山]](/img/27/ja/27_image_36.png)
![重要なリスク・機会 [農業]](/img/27/ja/27_image_37.png)
自然に関連する依存・インパクト、リスク・機会の重要性は場所により大きく異なることから、地域性を考慮する必要があります。優先セクター(鉱山・農業)に紐づく29の重要な拠点に対して、生態学的に要注意な地域に位置する事業を特定するためのロケーション分析を実施、さらにマテリアルな依存(「淡水供給」)・インパクト(「水利用」、「土地/淡水利用」および「汚染」)の評価を関連付けることで優先地域を特定しました。
なお、ロケーション分析では、立地ごとのリスクを分析できる外部ツールが現時点では限られていることから、「Aqueduct」、「Global Forest Watch」の2つのツール(※)を使用し、「水ストレス」、「生態系のセンシティビティ」、「樹木被覆の減少」、「先住民族・コミュニティの土地」の4つの項目にて分析しました。

優先地域の評価の結果、各セクターの優先地域の割合は以下の通りです。


当社グループでは、事業による自然へのリスクやインパクトを最小化させるために様々な取り組みを行っています。
まず、「環境方針」において、自然生態系等の環境保全並びに生物多様性の維持・保全に十分配慮することを掲げています。また、サプライチェーンにおける自然関連リスクへの対応を強化するため、2026年7月に「持続可能なサプライチェーン行動方針」を改訂し、サプライヤーに対して環境保全や生物多様性への配慮等を求めています。さらに、自然関連リスクが高い特定の調達品目については、個別商材の調達方針を制定し、サプライチェーン上の環境・社会課題への対応を推進しています。
当社グループはAR3T(※)の観点から、鉱山・農業セクター等においては以下のインパクトの低減や機会に繋がる取り組みを実施しています。

鉱山・農業セクターの関係事業のうち、優先地域の評価結果や投下資本額の規模や戦略的な重要性を踏まえて当社グループにおける自然資本の観点での優先事業を特定し、4.3 優先セクター(鉱山・農業)のLEAP分析で使用した外部ツールを利用しながら優先事業におけるLEAP分析・モニタリングを実施しております。尚、過年度優先事業であったUAEガス火力発電事業:Hamriyahも分析・モニタリング対象です。
| セクター | 事業 |
|---|---|
| 農業 |
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| 鉱山 |
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| 火力発電 |
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なお、「先住民族・コミュニティの土地」については、5事業のロケーション分析では土地・領土の権利侵害のリスクが高であるエリアに位置する事業は確認されなかったため、以降の記載を省略しています。 ただし、リスク分析の結果に関わらず、当社グループは人権尊重へのコミットメントの一環として「先住民族の権利に関する国際連合宣言」「自由意思による、事前の、十分な情報に基づいた同意(free, prior and informed consent:FPIC)」の原則などの、先住民族の権利に関する国際規範を尊重しています。また、先住民族が在住する地域での事業活動においては、先住民族が有する固有の文化や歴史を認識し、それぞれの国や地域で適用される法令や環境許認可等を遵守しており、先住民族・コミュニティへの配慮を行いながら操業しています。
①事業概要
当社の子会社であるFyffes(以下「本事業」)は、青果の生産や流通、販売を幅広く手掛けている事業です。バナナ、パイナップルを主力商品として取り扱い、中南米を中心に生産・調達した青果物を、欧州、北米で販売しております。
②Locate/Evaluate(発見・診断)
「水ストレス」「生態系センシティビティ」「樹木被覆の減少」について、中南米の農園についてロケーション分析を実施しました。
分析の結果、いずれの拠点でも水ストレスは高くないことが確認されました。一方で、生態系センシティビティについては、一部の拠点において、近隣に国際的に重要性が認知されている、「KBA(Key Biodiversity Area)」(ベリーズ、コスタリカ)または「生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)」 (コスタリカ)が存在することが確認されました。また、一部拠点の周辺地域において、樹木被覆の減少がみられることが確認されました。
③Assess(分析)
潜在的なリスクの認識・分析結果
セクターの一般的な依存・インパクト及びロケーション分析の結果、生態系のセンシティビティおよび樹木被覆の減少が特に対処が必要なリスクとなるため、それらの潜在的なリスクの将来変化を把握するべく、物理的リスクおよび移行リスクのシナリオ分析を実施しました。
<物理的リスク>
Climate Impact Explorer(※)を用いて樹木被覆や生態系センシティビティへの影響が大きい洪水リスクのシナリオ分析を実施しました。その結果、将来に渡って洪水発生リスクは低いことが確認されました。
<移行リスク>
土地改変による森林減少防止を目的とした規制が国・地域レベルで進展することで、関連品目に対しトレーサビリティ対策の強化等にコストが発生する可能性が考えられます。そのため、規制・市場・レピュテーション・技術の4つの観点のうち、規制リスクが主に対処するべきリスクであると考えられます。
潜在的なリスクに対する本事業の評価と対応策
本事業においては、サステナビリティ課題に関するマテリアリティ分析を継続的に実施しており、生態系保全や森林伐採や土壌侵食等を重要な課題として認識しています。そのため、2021年には本事業のコスタリカのバナナ農園がレインフォレスト・アライアンス2020認証を世界で初めて取得しました。また、土壌劣化を抑制するための土地保全プログラムを実施しており、所有地全体の約20%がその対象となっています。具体的には、バナナやパイナップル農園周辺での保全地域の設定、土壌浸食を防ぐための自然植生の保全や再植林、農場および約3,000ヘクタールの保全地域での生物多様性調査や保全計画策定等を実施しています。さらに、生態系や樹木被覆や水域を保全するため、農薬使用量減少に関する様々な病害虫管理の取り組みを実施しています。
そのため、生態系のセンシティビティや樹木被覆の減少に係る潜在的なリスクへの対応策を既に備えていると考えています。
対応策の更なる詳細は、Fyffes社が発行するサステナビリティレポートをご覧ください。
④Prepare(準備)
| 潜在的なリスク | 指標 | データ | TNFD指標番号 |
|---|---|---|---|
| 生態系センシティビティ | 陸域生態系の保全範囲 | 2024年時点で約2,819ヘクタールの保全地域を設定済 (保有地の約20%相当) |
C1.1 |
①事業概要
Quebrada Blanca銅鉱山事業(以下、「本事業」)は当社、住友金属鉱山株式会社(以下、「住友金属鉱山」)およびカナダの資源メジャー企業であるテック・リソーシズ(Teck Resources Limited)がチリ共和国北部のタラパカ州にて共同で運営する銅鉱山事業であり、当社および住友金属鉱山は2019年から参画しています。本事業はフェーズ2の操業を2023年より開始しており、今後25年以上にわたる長期安定的な生産を続ける計画です。
②Locate/Evaluate(発見・診断)
本事業では「水ストレス」「生態系センシティビティ」についてロケーション分析を実施した結果、本事業が立地する地域においては、「水ストレス」が高いことが確認されました。一方で、「生態系センシティビティ」については、本事業の近隣に保護区等の生物多様性の観点で重要なエリアは存在せず、リスクが低いことが確認されました。
③Assess(分析)
潜在的なリスクの認識・分析結果
セクターの一般的な依存・インパクト分析及びロケーション分析の結果、水ストレスが特に対処が必要なリスクとなるため、水ストレスに関する潜在的なリスクの将来変化を把握するべく、物理的リスクおよび移行リスクのシナリオ分析を実施しました。
<物理的リスク>
AQUEDUCTを活用し将来の水ストレス予測を分析した結果、いずれのシナリオ(Pessimistic、Business as Usual、Optimistic)においても、将来(2030年、2050年、2080年)にわたり水ストレスが高い状態が継続することが確認されました。
<移行リスク>
チリでは水資源枯渇が問題として広く認識されており、海水淡水化など、淡水の取水を削減するための設備導入の必要性が議論されています。従って、今後、内陸水の利用に関する規制が厳しくなる可能性があります。そのため、移行リスクの規制・市場・レピュテーション・技術の4つの観点のうち、規制の観点が特に対処すべきリスクと考えられます。
潜在的なリスクに対する、本事業の評価と対応策
本事業では、海水淡水化設備を既に導入済みであり、事業に必要な水の9割以上を海水淡水化によって確保しています。加えて、使用した水の8割以上を再利用することで、淡水の取水量を大幅に低減しています。従って、取水による地域の水源への影響を最小化し、水ストレスの高い状態が継続することによる物理的リスクや、規制の観点での移行リスクを含む水ストレスに係る潜在的なリスクへの対応策を既に備えています。
④Prepare(準備)
| 潜在的なリスク | 指標 | データ(2024年) | TNFD指標番号 | |||||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 水ストレス | 取水量(ML) |
|
C3.0 | |||||||||||||||
| 水再利用・リサイクル率 | 84% | A3.2 |
①事業概要
当社の持分法適用会社であるORESTEEL INVESTMENTS (PROPRIETARY) LIMITED (以下「Oresteel」)は、南アフリカの鉄鉱石・マンガン鉱石生産会社Assmangの株式50%を保有するAssoreの持株会社です。Oresteelは南アフリカを拠点としており、Assoreを通じてクロム鉱山等を、またAssmang(Assore及びAfrican Rainbow Minerals(ARM)が株式50%ずつを保有)を通じて鉄鉱山、マンガン鉱山等を間接的に複数保有しています。
②Locate/Evaluate(発見・診断)
「水ストレス」「生態系センシティビティ」についてロケーション分析を実施した結果、各鉱山(今回の分析対象はKhumani鉄鉱山、Black Rockマンガン鉱山の2鉱山)が立地する地域においては、水ストレスが高いことが確認されました。一方で、生態系センシティビティについては、各鉱山の近隣に保護区等の生物多様性の観点で重要なエリアは位置しないことが確認されました。
③Assess(分析)
潜在的なリスクの認識・分析結果
セクターの一般的な依存・インパクト分析及びロケーション分析の結果、水ストレスに関するリスクが、特に対処が必要なリスクとなるため、水ストレスに関する潜在的なリスクが将来どのように変化していくかを把握するべく、物理的リスクおよび移行リスクのシナリオ分析を実施しました。
<物理的リスク>
AQUEDUCTを活用し将来の水ストレス予測を分析しました。分析の結果、いずれの鉱山が立地する拠点において、またいずれのシナリオ(Pessimistic、Business as Usual、Optimistic)においても、将来(2030年、2050年、2080年)水ストレスが高い状態が継続することが確認されました。
<移行リスク>
今後、水ストレスが高い状態が継続する場合、南アフリカにおいて鉱山セクターにおける淡水利用に対する制限が強化される、またこれに伴う追加設備・技術導入による追加コストが上昇する、といったリスクが潜在的にあると考えられます。そのため、規制・市場・レピュテーション・技術の4つの観点のうち、規制リスクと技術リスクが主に対処するべきリスクであると考えています。
潜在的なリスクに対するOresteelの評価と対応策
Khumani鉄鉱山においては、水回収、貯水設備の建設、雨水管理の改善といった包括的な対策を行っています。また生産量1トン当たりの水利用量目標を設け、実績のモニタリングを実施しています。加えて、Black Rockマンガン鉱山においても再生水の利用、雨水管理の改善に加え、近隣コミュニティにおいて処理水の使用を推奨することで、地域全体の取水量を減らす取り組みを行っています。
各鉱山において内陸水の取水量を削減することで、取水による地域の水源への影響及び将来にわたり水資源が枯渇した場合の事業への影響を最小化しており、水ストレスに係る潜在的なリスクへの対応策を既に備えていると考えています。
④Prepare(準備)
Oresteelでは水利用や生態系等に関する現地国の環境許認可等の厳しい法規制を遵守し操業を行っており、今後も引き続き関連法規制を遵守した事業運営を行います。
潜在的なリスクとして確認された水ストレスについては、水利用量(及び水再利用/リサイクル率)に関し、目標未設定の鉱山における対応状況を含めて、事業会社との対話を通じて確認していきます。また、引き続き現地における規制動向等を注視していきます。
| 潜在的なリスク | 指標 | データ | TNFD指標番号 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 水ストレス | 取水量 (万m3) | 決算年度(※) | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | C3.0 |
| Khumani | 482 | 466 | 404 | 390 | 494 | |||
| Black Rock | 138 | 110 | 204 | 162 | 222 | |||
| ※Operational Water withdrawal | ||||||||
| 生産量1トン当たりの 水利用量 (m3/トン) | Khumani | 2025年度 0.343(目標値:0.319以下) | ||||||
| Black Rock | ※今後、定量目標を設定予定 | |||||||
①事業概要
Mineração Usiminas S/A(以下、「本事業」)は、Usiminas社が70%、当社が30%株式を保有する合弁会社であり、ブラジルのミナスジェライス州のセ―ハアズール地域において3つの鉱山を操業し鉄鉱石の生産、販売を行っています。
②Locate/Evaluate(発見・診断)
「水ストレス」「生態系センシティビティ」のロケーション分析を実施した結果、水ストレスについては、本事業が位置する地域では水ストレスは高くないことが確認されました。一方で、生態系のセンシティビティについては、本事業が立地する地域は、高い生物多様性を有する熱帯原生林が分布する地域に位置していることが確認されました。
③Assess(分析)
潜在的なリスクの認識・分析結果
セクターの一般的な依存・インパクト分析及びロケーション分析の結果、陸上生態系の利用によるインパクトが特に大きい事業であることを確認しています。高い生物多様性を有する熱帯原生林が事業地の近隣に分布する本事業では、「土地利用の変化」と「汚染(特にテーリングに由来する汚染)」が特に対処が必要なリスクとなるため、これらのリスクが将来どのように変化していくかを把握するべく、物理的リスクおよび移行リスクのシナリオ分析を実施しました。
<物理的リスク>
Climate Impact Explorer(※)を用いた分析を行いました。その結果、本事業が位置するブラジルのミナスジェライス州では、洪水や極端な降雨の発生可能性が将来上昇する可能性があることが確認され、テーリングダムなどの関連施設がダメージを受けた場合に、汚染物質が周辺環境に排出される可能性もあり、周辺の生態系や生物種に影響を与えるリスクが潜在的にあることを認識しています。
<移行リスク>
近年の自然資本への関心の高まりや、鉱山セクターでのテーリング施設に由来する汚染の可能性が一般に認識されていることを踏まえ、閉山に伴う土地保全や、テーリングダム管理に関する規制が厳しくなり、追加の対応や、新たな技術の導入に係るコストなどが発生するリスクがあります。そのため、規制・市場・レピュテーション・技術の4つの観点のうち、規制および技術の観点が主に対処すべきリスクであると考えています。
潜在的なリスクに対する、本事業の対応策と評価
本事業では、土地利用の変化に対して環境影響評価を実施し、廃棄物の適切な管理や、植物や野生動物のレスキュープログラムなどの、土地改変による影響を最小化する緩和策を実施しています。また、鉱山フットプリントよりも大きい面積の土地を植林活動や保全地役権の設定、元来の植生保護等を行う保全・保護エリアとして確保しています。さらに、本事業が位置する地域で動物モニタリングプログラムを実施しており、将来的に調査結果等を地域での保全に生かしていくことを検討しています。従って、本事業では、こうした土地改変の影響緩和や保全・保護に係る取り組みにより、移行リスクを含む土地利用の変化に係る潜在的なリスクに対処可能であり、洪水や局所豪雨による関連施設への損害等の物理的なリスクにも効果があると考えております。
テーリングに由来する汚染に対しては、従来式のテーリングダム設備の代わりに、プロセス水を再利用・循環することで外部環境への排水が発生しない安定性の高ドライスタッキングシステムの導入を進めており、日次での目視点検や地質工学的なモニタリングを含む、現地国の法規制を遵守した管理を行っているほか、水質モニタリングも実施して確認をしています。
従って、土地利用や汚染に関する潜在的なリスクに対処可能であると考えています。
④Prepare(準備)
本事業では、水利用や生態系、先住民の土地等に関する現地国の環境許認可等の法規制を遵守し操業を行っており、今後も引き続き関連法規制を遵守した事業運営を行います。潜在的なリスクとして確認された土地利用の変化については、鉱山事業のフットプリントや保全・保護面積といった指標をモニタリングしていきます。
汚染については、2025年度には最後の従来式テーリングダムの解体が完了予定ですが、今後も継続して水質モニタリングを行うことで、事業活動が地域の水質に影響を与えていないか注視するほか、ドライスタッキングシステムからの排水についてもモニタリングしていきます。
| 潜在的なリスク | 指標 | データ(2025年) | TNFD指標番号 |
|---|---|---|---|
| 土地利用変化 | 陸/淡水/海洋生態系の利用変化の範囲 | 鉱山事業の合計フットプリント: 11km2(1,100ha) | C1.1 |
| 陸/淡水/海洋生態系の保全又は復元の範囲 | 法令又は規制により義務化: Environmental Protection Area:74km2(7,400ha) Legal Reserve:14.64 km2(1,464ha) |
C1.1 | |
| テーリングに由来する汚染 | 廃水排出 | ドライスタッキングシステムからの排水:0 m3 | C2.1 |
①事業概要
Hamriyahガス火力発電事業(以下「本事業」)は、アラブ首長国連邦 シャルジャ首長国で初となる大型IPP火力発電事業です。同国ハムリヤ地区に位置する本事業は、発電ユニット3基(約1,800メガワット)で構成されており、最初のユニットは2021年に、残りのユニットは2023年に商業運転を開始しています。
②Locate/Evaluate(発見・診断)
「水ストレス」「生態系センシティビティ」についてロケーション分析を実施した結果、本事業が立地する地域は水ストレスが高いことが確認されました。また、生態系センシティビティについては、本事業の近隣に保護区が存在することが確認されました。
③Assess(分析)
潜在的なリスクの認識・分析結果
セクターの一般的な依存・インパクト及びロケーション分析の結果、水ストレスに関するリスクが、特に対処が必要なリスクとなります。また、生態系センシティビティについても生物多様性の観点で重要なエリアが近接することからリスク評価結果がMiddleであるため、補完的に対処すべきリスクとなります。
水ストレスに関する潜在的なリスクが将来どのように変化していくかを把握するため、物理的リスクおよび移行リスクのシナリオ分析を実施しました。
<物理的リスク>
AQUEDUCTを活用し将来の水ストレス予測を分析した結果、いずれのシナリオ(Pessimistic、Business as Usual、Optimistic)においても、将来(2030年、2050年、2080年)水ストレスが極めて高い状態が継続することが確認されました。
<移行リスク>
アラブ首長国連邦では、水資源枯渇が問題として広く議論されており、国家戦略や各種法規制においても持続可能な水資源の維持・管理の重要性が認識されています。従って今後、企業への水関連の対応が一層求められるなど、対応コストが発生する可能性が潜在的にあると考えています。そのため、規制・市場・レピュテーション・技術の4つの観点のうち、規制の観点が特に対処するべきであると考えています。
また、生態系のセンシティビティについては補完的に対処すべき潜在的リスクであると考えられます。具体的には、発電所の冷却にあたって生じる温排水、また海水淡水化にあたって生じる高濃度塩水(ブライン)による汚染の環境影響が潜在的に発生する可能性があります。本事業が立地するサイトの近隣には、マングローブや貴重な海洋生態系が存在する湿地が位置することから、こうした生態系への影響の可能性が考えられます。
潜在的なリスクに対する、本事業の評価と対応策
本事業では海水淡水化設備を導入済みであり、淡水は使用しておらず、海水を淡水化することで事業活動に必要な水を確保しています。従って、取水による地域の水源への影響及び将来にわたり水資源が枯渇した場合の事業への影響を最小化しており、水ストレスに係るリスクへの対応策を既に備えていると考えています。
また生態系センシティビティについては、本事業では温排水や高濃度塩水(ブライン)等による汚染の環境影響が想定されますが、いずれも環境影響評価の結果、海水表面で分散・希釈されるため海洋生態系への影響は軽微かつ基準内であることが確認されました。加えて、近隣のサンゴや真珠貝が生息するエリアでは年次の海洋生態系調査も行っており、本事業の活動のみに起因する広範な環境悪化が起きていないことも確認しており、生態系センシティビティに係る潜在的なリスクにも対処可能であると考えています。
④Prepare(準備)
| 潜在的なリスク | 指標 | データ | TNFD指標番号 |
|---|---|---|---|
| 水ストレス | 取水量 | 淡水の使用なし(海水を淡水化して使用) 【参考】 海水消費量2025年:約8.3億m3 |
C3.0 |
| 生態系 センシティビティ | 温排水の温度 | 2026年5月: |
C2.1 |
「水ストレス」、「生態系のセンシティビティ」、「樹木被覆の減少」、「先住民族・コミュニティの土地」の各項目の評価方法の概要を以下に示します。
「Aqueduct」を活用し、事業拠点が位置する地域における水ストレス(Baseline Water Stress)を確認し、そのレベルに応じ、「高リスク」、「中リスク」、「低リスク」の3段階でリスクを評価しました。
「Global Forest Watch」を活用し、生物多様性の観点で重要な以下のエリアと事業拠点の位置関係を確認し、その近接度合いにより、「高リスク」、「中リスク」、「低リスク」の3段階でリスクを評価しました。
「Global Forest Watch」を活用し、事業拠点周辺における樹木被覆の減少が大きいエリアを確認し、その度合いに応じて、「高リスク」、「低リスク」の2段階でリスクを評価しました。
先住民族やコミュニティの生活や生計は、土地、資源、水等の自然資本と深く結びついている場合があり、そのような重大な依存関係にある土地が分布する可能性があるエリアを確認するため、「Global Forest Watch」を活用して事業拠点周辺を確認し、分布の有無および評価データの有無に応じて、「高リスク」、「中リスク」、「低リスク」の3段階でリスクを評価しました。
当社グループの事業は多岐にわたるため、セクターや地域に応じて自然との関係性が異なります。そのような事業特性を踏まえ、従来は個別事業ごとの取り組みを推進してきましたが、中期目標で掲げた「2030年ネイチャーポジティブに向けた取り組みの促進」のためには、より全社視点でのリスクとインパクトの管理および施策検討も必要であると考えています。
そこで今回は、より俯瞰したレベルで分析を実施するため、VCを含む当社グループの事業全体の依存・インパクトの概観の評価と、特に優先度が高いと考えられた鉱山セクターと農業セクターを対象にしたセクターレベル、また一部優先事業においては事業レベルでの自然関連課題の分析と検討を行いました。重要なリスクとインパクトの具体的な検討方法・評価結果は「戦略」をご確認ください。
なお、自然関連のリスク・機会には気候変動に関するリスク・機会も含まれますが、当社は気候変動に関してTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づいて開示しています。気候変動に関するリスク・機会については「気候変動」をご確認ください。
当社グループのリスクマネジメントにおいては、営業活動を「投資」と「商取引」に大別した上で、それぞれに固有のリスクファクターおよび双方に共通するリスクファクターを洗い出して管理しています。「社会・環境リスク」は、リスクファクターの一つとして位置づけられており、自然関連リスクもその中で全社的なフレームワークに組み込んで管理しています。

当社グループの事業活動は、多様な産業、広範な地域に跨っており、それぞれの事業が地球環境や地域社会、取引先、あるいは役職員等の異なるステークホルダーに様々な影響をもたらします。当社グループの各事業活動が社会・環境に与える影響や、重点的に管理すべきリスクの性質は、事業が取り扱う商品、業態、あるいは活動地域等によって異なるため、個々の事業の特性を踏まえたリスク管理が必要です。
具体的には、各事業について、事業の内容や所在地域の特性、社会・環境との関わりやリスクを認識すること、地域社会や従業員等のステークホルダーとのコミュニケーションルートを持ち、深刻な問題が生じていないかどうかを把握すること、社会・環境に関する各問題について、法令を遵守するだけでなく、環境や人権に係る国際的なスタンダードに則って対応することに努め、リスク管理を行っています。

当社グループは、様々なビジネスを含むグループ全体の活動が与える社会・環境面への影響を適切に管理するため、投融資実行の際の審査や定期的なモニタリング等の全社的フレームワークを整えています。投融資に係るデューデリジェンスの際には、各事業内容・地域特性を踏まえ、気候変動、自然破壊、環境汚染、水リスク、労働環境・安全衛生、地域社会への影響などに関する社会・環境関連リスク評価を行います。リスク管理の実効性をさらに高めるため、SASB基準等のリスク情報をもとに、社会・環境関連リスクに特化したセルフアセスメントシートを用いてリスクおよび機会を洗い出すとともに、全社投融資委員会においても社会・環境への影響を踏まえた意思決定が行われる体制を整えています。
セルフアセスメントシートでの評価項目のうち、自然資本に関係する評価要件は以下の通りです。

投融資後の事業についても、事業会社との対話を通じた定期的なモニタリングや、内部監査等のプロセスを通じ、社会・環境関連リスク管理状況を確認し、課題がある場合は、その事業の特性に応じて改善を進めています。また、当社グループの事業活動の影響について、地域住民やNGO等、ステークホルダーから問題の指摘を受けた場合は、実態を踏まえて、対話・協議を行い、改善に努めているほか、重要事業については、当社から説明・対話を行うなど、エンゲージメントを強化しています。
また、こうした事前審査やモニタリングの結果、個別案件の重要な社会・環境問題への対応は、必要に応じて外部専門家からの助言も踏まえ適切な対応を検討するとともに、関連する社内の委員会を通じて経営会議・取締役会に付議・報告しており、取締役会の監督のもと、社会・環境関連リスクへの対応および管理体制の強化に取り組んでいます。

社会・環境関連リスクの考え方、管理体制の詳細については、「リスクマネジメント」をご覧ください。
TNFDの示すグローバル中核開示指標、グローバル追加開示指標のうち、当社グループが測定し、「環境関連データ」に開示を行っている指標と、個別事業で測定し、「戦略」の中で開示を行っている指標を下表の通りに整理しました。
「2030年ネイチャーポジティブに向けた取り組みの促進」に向けて、さらなる測定指標の拡充、モニタリングおよび改善に努めます。
| No | 自然の変化の要因 | 指標 | 対象範囲 | 開示内容・対応状況 |
|---|---|---|---|---|
| 気候変動 | GHG 排出量 | 連結 | Scope1・2、Scope3排出量 | |
| C1.0 | 陸/淡水/海洋利用の変化 | 総空間フットプリント | 個別事業 | 【鉱山】MUSA:鉱業事業の総フットプリント |
| 陸/淡水/海洋の利用変化の範囲 | 個別事業 | 【農業】Fyffes:保全地域 | ||
| 【鉱山】MUSA:Environmental Protection Area | ||||
| C1.1 | 【鉱山】MUSA:Legal Reserve | |||
| C2.1 | 汚染/汚染除去 | 廃水排出 | 連結/ 個別事業 |
連結:総排水量 |
| 【鉱山】MUSA:ドライスタッキング由来の外部排水量 | ||||
| C2.2 | 廃棄物の発生と処理 | 連結・ 単体 |
廃棄物排出量、事業系一般廃棄物のリサイクル量・最終処分量・リサイクル率、有害廃棄物排出量 | |
| C2.3 | プラスチック汚染 | 単体 | プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量、再資源化量、熱回収量の開示 | |
| C2.4 | 温室効果ガス(GHG)以外の大気汚染物質総量 | 単体 | 大気汚染物質排出量(NOx、SOxを含む) | |
| C3.0 | 資源使用/資源補充 | 水不足の地域からの取水量と消費量 | 連結/ 個別事業 |
連結:水ストレス地域の取水量 |
| 【鉱山】Quebrada Blanca:取水量 | ||||
| 【鉱山】Oresteel:取水量、生産量1トン当たりの水利用量 | ||||
| C7.2 | リスク | 自然関連のマイナスのインパクトにより当該年度に発生した多額の罰金、科料、訴訟の内容と金額 | 単体 | 環境関連法規違反、罰金件数、罰金額(罰金100万円以上など) |
| A3.2 | 自然の変化の要因: 資源の利用と補充 |
削減、再利用/リサイクルされた水 | 個別事業 | 【鉱山】Quebrada Blanca:銅鉱山・選鉱場における水再利用・リサイクル率 |
当社グループでは、自然資本に関する新たな事業開発にも挑戦しています。特に循環型経済への転換を促す製品・サービス・仕組みづくりは、当社グループにとって大きな事業機会があると捉えています。循環型経済への転換は、原材料の生産段階等で発生する自然へのインパクトを回避・軽減することにも繋がることから、自然関連のインパクトの低減・機会の創出にも関連する取り組みと考えています。製品・サービス・仕組みづくりとして、以下のような具体的な取り組み事例も出てきています。
また、経済産業省が推進する「サーキュラーパートナーズ(CPs)」に参画し、ルール形成への参画やネットワーキング等を図り、循環型経済に貢献する事業の創出に取り組んでいます。
また2025年度には、マングローブ植林由来のカーボンクレジット事業へ参入しました。当該事業は、脱炭素化に向けた市場成長を促進するとともに、マングローブによる多様な生き物の生息地の確保・水質浄化等の生態系サービスの向上への寄与や、マングローブの育成管理等を行う地域住民の就業機会拡大・生計向上への寄与を通じて、ネイチャーポジティブへ貢献するものであると捉えています。
当社グループでは、以上のようなリスク低減と機会の創出の両面での取り組みを行っていますが、ネイチャーポジティブに向けた取り組みについては、今後国際的なルールや指標の策定・更新が見込まれるなど、社会全体として発展過程にあるものと認識しています。したがって上記戦略についても、投資家をはじめとしたステークホルダーとの対話を積極的に行いながら、今後の外部環境の変化を正しく捉え、当社の自然資本の取り組みに反映していきます。
人口増加や都市化・工業化を背景に地球規模で水需要の増大が見込まれる一方、安全で衛生的な水インフラ環境の整備は進んでおらず、水問題は深刻化していくとみられています。21世紀に入ってからは、水問題解決を目指した水ビジネスへの取り組みが世界的に注目されはじめました。開発途上国における安全で衛生的な生活環境の実現に貢献するのは先進国の責務である、という意識の高まりも影響しています。
当社では、上水だけでなく下水も併せた水ビジネスを社会インフラの重要な柱と考え、世界各地でさまざまな取り組みを行っています。水需要の増大が著しい地域等、世界各地の有望市場において、上下水処理や海水淡水化等の民活型(※1)であるBOOT/BOO事業(※2)から完全民営化事業に至るまで領域を広げ実績を積んできました。
日本の技術を活かした安心・安全な水の提供や、民間資本を活用した社会コスト削減要請への対応を通して、世界中に広がる水問題の解決に貢献すべく、よりグローバルで多面的な水ビジネスへの挑戦を続けています。
| 国 | 事業内容 | 事業分類 |
|---|---|---|
| ブラジル | 上下水道23件のアセットを保有するブラジル水関連民間企業では最大級のBRK Ambiental社へ出資(当社間接持分比率は14%)、大きな成長が予想されるブラジル上下水事業に参画。 | 上下水事業 |
| 中国 | 中国水事業大手の北京キャピタル(北京首創生態環保集団)とCapital Summit社(当社持分比率は40%)を設立、山東省ならびに浙江省で下水処理場を共同運営。 | 下水事業 |
| オマーン | 逆浸透膜技術により海水を淡水化する民活型造水事業を受注。2016年2月より商業運転を開始。 | 造水事業 |
農家のニーズに応えた高品質な農薬・肥料を世界中に届け、農作物の生産性向上に寄与すること、これこそが当社の農薬・肥料販売事業の最大のミッションです。輸入・生産・ディストリビューション・直販といった機能を各国市場の特性を踏まえ選択し組み合わせ、農薬・肥料販売事業を現在約40カ国で展開しています。国によっては、農薬の空ボトルやアルミバッグ等が適切に処分されずに放棄され、環境汚染を起こす可能性や残存した農薬による事故や環境への悪影響が懸念されています。ブラジルのアグロアマゾニア社、メキシコのサミットアグロメキシコ社では、農薬空容器の回収・リサイクルに同業他社とともに業界として取り組み、環境保全に努めています。一方、農薬そのものの環境負荷低減のため、バイオ農薬への取り組み(スペインのFutureco社、チリのBio Insumos Nativa社、米国のDPH Biologicals社などバイオ農薬メーカーへの出資参画、グローバル商品開発組織を立ち上げてのバイオ農薬取り扱い強化等)や、農薬だけに頼らない環境負荷の低い Integrated Pest Management(IPM:総合的病害虫防除)にも取り組んでいます。IPMの一つとして信越化学工業㈱の開発した昆虫の性フェロモンを用いた交信攪乱剤(フェロモン剤)の普及に努めています。フェロモン剤は目的の害虫以外の生物には無害であり、害虫個体数の減少はもとより、植物の内部に侵入する防除が困難な害虫にも効果がある他、害虫の殺虫剤への抵抗性抑制も期待できます。現在、フランスの果樹園の約60%でこの防除法が採用されています。フランスのみならずポーランド、ブルガリア、トルコ等の東欧・中東地域にも販売を広げる等、これらの国での環境負荷を低減した農業生産の普及に貢献しています。また、緩効性肥料(肥料の溶出速度をコントロールし、肥料成分の有効利用率を高めることで減肥につながる)、バイオスティミュラント(植物が本来持っている免疫力・活力を高め、病害虫や寒暖等のストレスに対する耐性を上げることで減肥につながる)、微生物資材(空気中の窒素をアンモニアなどの植物が利用出来る形に変換し、化学肥料の窒素投入量の削減・土壌改良・環境負荷低減に資する)の拡販を通じて、従来の化学肥料の施肥量を減らし耕地への環境負荷を減らす取り組み(このような高機能肥料が主力商品であるルーマニアのNaturevo社への出資参画等)を行っています。
スペインのバイオ農薬メーカーに出資
ブラジル農業資材直販事業(アグロアマゾニア社)
フェロモン剤使用の様子
当社は1954年から海運会社向けに船舶燃料の供給事業を国内外で展開しています。また、海運業界の環境負荷の低減に貢献すべく、硫黄酸化物が排出されない、かつ窒素酸化物も従来比40-70%減、二酸化炭素も20%減となるLNG燃料の供給事業にも取り組んでいます。具体的には上野トランステック㈱、横浜川崎国際港湾㈱ならびに㈱日本政策投資銀行との合弁会社を通じてLNGバンカリング船を発注、東京湾でのLNG燃料供給開始の準備を進めています。
国際連合の専門機関である国際海事機関(IMO)は、世界中の海上輸送から発生する温室効果ガス(GHG)の排出量を2050年頃までにゼロにする戦略を掲げています。このような中、アンモニアは燃焼時にCO2を排出しないため、海運業界におけるGHG排出量削減に大きく寄与する可能性のある次世代の代替船舶燃料として期待されています。特にグリーンアンモニアは、再生可能な電気、水、空気のみから製造され、ライフサイクルにおいてCO2を排出しないため、海運業界のカーボンフリー化に大きく貢献する可能性を秘めています。当社はシンガポール政府より、同国における船舶燃料向けのアンモニアバリューチェーン構築の事業開発者に選定されており、アンモニアバンカリング船の詳細設計や、商用化に向けた供給実証の準備を進めています。本取り組みを通じてGHGを排出しない船舶燃料の供給・輸送・貯蔵・バンカリングを含む包括的サプライチェーンを構築し、海運業界の脱炭素化への貢献を目指します。

当社グループは、生物多様性に配慮し、農家の安定収入にもつながる取り組みとして、2004年からバードフレンドリー®認証コーヒー(以下、BF®認証コーヒー)の輸入・販売を手掛け、2014年度からは住商フーズにてBF®認証コーヒーを取り扱っています。BF®認証コーヒーは、自然林と同様のシェード(木陰)を保ちながら栽培することで、環境保全やそこで羽を休める渡り鳥の保護につながる取り組みです。米国スミソニアン渡り鳥センターがその認証基準を設定し、現在、全世界で12カ国(※1)67農園・農協(2026年5月現在)が認証を受け、収益の一部は、同センターの渡り鳥の研究・調査・保護活動に使われています。

本事業は、2019年、国際自然保護連合日本委員会が認定する「国連生物多様性の10年日本委員会(※2)(UNDB-J)認定連携事業」に認定されました。UNDB-Jの認定連携事業になったということは、生物多様性保全活動として重要な活動であり、また、「愛知目標(※3)」の達成に向けて成果を上げてきた活動であることを意味します。
今後も本事業を通して、世界中の渡り鳥保護・生態系保護に貢献していきます。