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Social 社会

人権の尊重

「人権の尊重」についてご紹介している住友商事のサステナビリティページです。

住友商事グループ人権方針

2020年5月制定

住友商事は、広く社会に貢献するグローバルな企業グループを目指し、人間尊重を経営姿勢の基本とすることを経営理念の中で掲げています。私たちは、企業に求められる社会的責任として人権を尊重し、社会とともに持続的に成長することを目指します。

住友商事は、2009年に経営理念と共通の価値観を提唱するものとして、人権や労働の分野を含む「国連グローバル・コンパクト10原則」に署名しています。また、「国際人権章典」および国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」が定める人権を尊重し、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則って活動します。

  1. 適用の範囲
    住友商事は、グループ全体のすべての役職員が人権尊重の責任を果たすよう努めます。また、住友商事は、サプライヤーを始めとする取引先や事業パートナーに対し、本方針への賛同と理解、実践を求め、関与するバリューチェーンにおいて、ともに人権尊重を含む社会的責任を果たすよう働きかけていきます。
  2. 人権デューデリジェンス
    住友商事は、人権デューデリジェンスの取り組みを通じて人権への負の影響を特定し、その防止、または軽減を図るよう努めます。当社グループの活動が人権に負の影響を引き起こしたこと、または助長したことが明らかになった場合、適切な措置を講じることでその救済に努めます。
  3. 適用法令の遵守
    住友商事は、グループ全体の事業活動において、関連する国・地域の法令を遵守します。国際的に認められた人権と各国法の間に矛盾がある場合においては、国際的な人権規範を尊重するための方法を追求します。
  4. ステークホルダーとの対話・協議
    住友商事は、関連するステークホルダーとの対話と協議を行うことにより、人権尊重の取組みの向上と改善に努めます。
  5. 社内啓発
    住友商事は、本人権方針が理解され、効果的に実施されるよう、住友商事グループの役職員に対し、適切な啓発活動を推進します。
  6. 情報開示
    住友商事は、人権尊重の取り組みについて、適切な情報開示を行います。

(参考)国連グローバル・コンパクト

労働基準に関連する国際規範や法令の遵守

当社グループは、国連グローバル・コンパクト 10 原則及び国際労働機関(ILO)が中核的労働基準として定めている5分野10条約「結社の自由・団体交渉権の承認」「強制労働の禁止」「児童労働の禁止」「差別の撤廃」「安全で健康的な労働環境」を支持、尊重するとともに、事業活動を行う世界各国の法令を遵守し、人権課題に取り組んでいます。特に、「差別の撤廃」に関しては、人種、国籍、性別、宗教、信条、年齢、出身、身体的・精神的障害、その他業務の遂行と全く関係のない事由に基づく差別を行ってはいけない旨を明確にしています。また、各国の労働基準や労働協約に基づき、最低賃金の遵守にも取り組んでいます。

子どもの権利の尊重

世界人口の多くは子どもや若者で占められており、当社グループがグローバルに企業活動を行うにあたって、直接的にも間接的にも子どもの生活に影響を及ぼすことを認識しています。企業にとって子どもは、従業員の家族でもあり、さらにはこれからの社会の持続的発展を担う重要なステークホルダーです。こうした認識に基づき、当社グループは、国連グローバル・コンパクト10原則に署名するとともに、「子どもの権利とビジネス原則」の内容を尊重し、事業活動および社会貢献活動を通じて子どもの権利が侵害されることがないよう取り組んでいきます。

先住民の権利の尊重

当社グループは人権尊重へのコミットメントの一環として「先住民族の権利に関する国際連合宣言」「自由意思による、事前の、十分な情報に基づいた同意(free, prior and informed consent:FPIC)」の原則などの、先住民の権利に関する国際規範を尊重します。また、先住民が在住する地域での事業活動においては、先住民が有する固有の文化や歴史を認識し、それぞれの国や地域で適用される法令を遵守します。

警備会社起用に関する考え方

当社グループは、世界各国で事業展開を行うにあたり、従業員の安全・安心を守るため警備会社を起用します。必要に応じて、武装警備員を起用することもありますが、起用にあたっては、それに伴う人権リスクを認識した上で、事業活動を行う各国の法令を遵守するとともに「安全と人権に関する自主原則」や「法執行官による力と銃器の使用に関する基本原則」に沿った警備会社の選定を行っていきます。

株式会社ディ・エフ・エフ

人権デューデリジェンスの実施・進捗

当社は、「住友商事グループ人権方針」に基づき、当社グループの事業活動が与える人権へのリスクを特定・防止・是正するために、2020年より人権デューデリジェンスを開始しました。2020年度は、その最初のステップとして、グループ全体の人権への影響・リスクを評価するために、優先的に対応すべき顕著な人権課題の特定に取り組みました。2021年度より、中期目標「2025年までにサプライチェーンを含む全事業を対象に人権リスクを評価し、リスク低減策を実施すること」に沿って対象を全事業に拡大し、部門別の人権デューデリジェンスを開始。2021年に実施したメディア・デジタル事業部門、生活・不動産事業部門に続き、2022年度はインフラ事業部門、資源・化学品事業部門を対象に全SBU(Strategic Business Units)について、人権リスクの特定と評価を行いました。当社の人権デューデリジェンスは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」、「国連指導原則報告フレームワーク」、「OECD責任ある企業行動のためのデューデリジェンスガイダンス」等、国際的なガイドラインに沿ったプロセスで実施しています。

部門別の人権デューデリジェンスのプロセス

デスクトップ調査で、当社グループの事業における人権課題を、8つの顕著な人権課題を中心に俯瞰的に洗い出し、他社も含めたグローバルで発生している顕在化事例等も参考に、相対的に人権リスクが高いと思われる事業部門から人権デューデリジェンスを実施しています。

外部専門家を起用し、部門に属する全てのSBUに対してインタビューを実施し、それぞれの事業におけるサプライチェーンや事業活動に関連する地域住民等、ステークホルダーへの影響を含めたビジネスの実態や顕在化事例を確認するとともに、想定される潜在的リスクについても特定し、それらに対する対応状況もヒアリングしました。ヒアリング結果を踏まえて、人権リスクの発生可能性と発生した場合に生じる深刻度の観点から、優先してリスク低減に取り組むべきSBU、あるいはSBU内の個別事業を特定しました。サステナビリティ推進部と対象SBU・対象事業会社が協力し、特定された人権リスクに対する具体的な防止・軽減策の検討・実行を進めています。

今後、他の部門も順次人権リスクの特定・評価を行いつつ、各SBUにおいて人権リスクの防止・軽減策を実行し、それらを継続的にモニタリングし、新たな取り組みにつなげるPDCAサイクルを回していきます。

当社の人権デューデリジェンスに関する特集はこちら

部門別の人権デューデリジェンスのプロセス
  • 部門別人権デューデリジェンスで特定したSBU/事業以外についても、人権デューデリジェンスの実施を促進。

2022年度に実施

2022年度は、インフラ事業部門、資源・化学品事業部門の全SBUについて、顕在的・潜在的な人権リスクの特定・評価を行い、商材や地域等の事業性質上懸念される人権リスクに対して、サプライヤー調査や改善活動等具体的な取り組みの実施状況を確認しました。本インタビューを通じて特定した一部の人権リスクについては更なる対策の強化検討・実行につなげます。また、このプロセスを通じて、改めて住友商事グループの役職員に対して、企業の人権尊重に係る責任について理解・浸透を促しており、加えて、指導原則に基づく人権教育についても具体的な取り組みを進め、2022年度は単体全役職員向けの研修プログラムを実施し、中期目標に掲げている受講率100%を達成しました。

インフラ事業部門

当社グループの事業における8つの顕著な人権課題
主な人権課題 特定された顕在的・潜在的リスク 評価・対応策
労働安全衛生
労働条件
  • インフラ事業部門は、建設工事現場等、労働者の労働条件、安全衛生に留意すべき現場を有する事業が多い。
  • 労働安全衛生管理に対し、いずれの事業においても、従業員教育も含めて意識高く取り組んでいることを確認。
  • 労働条件が適切であるかを、労働者との対話等により確認し、必要に応じ対応する仕組みがあり、現状深刻な問題が起きていないことを確認。
地域住民の健康安全
土地の権利
  • 天然資源を調達・使用するインフラ事業においては、サプライチェーン上流の地域住民の人権尊重に十分に配慮する必要あり。
  • 使用する天然資源のサプライチェーン上流については、地域住民への影響に配慮し、社会・環境リスクの確認プロセスをさらに強化。
地域住民の健康安全
土地の権利
労働条件
  • 各国地域の土地開発、建設工事、インフラ設備運営等を行うインフラ事業においては、かかわる地域住民や労働者との迅速・丁寧なエンゲージメント及び適切なアクションに繋げる仕組みが重要。
  • 地域住民との対話は、事業に関する事前説明会の実施や、現地事務所における日常のコミュニケーションを含め、いずれの事業においても、丁寧に実施されていることを確認。

資源・化学品事業部門

当社グループの事業における8つの顕著な人権課題
主な人権課題 特定された顕在的・潜在的リスク 評価・対応策
労働条件
労働安全衛生
  • 鉱山事業や製造事業においては、労働者の労働条件、労働安全衛生に関するリスクが高い。
  • 事業会社において安全管理推進体制(労働災害リスク低減プロセス、労働災害発生率目標と達成施策)があること、災害発生時の再発防止等のPDCAプロセスに問題がないことを確認。また、労働条件に問題がないことを確認。
強制・児童労働
  • 製造事業やトレーディング事業では、サプライチェーン上流での労働条件や強制労働等の人権侵害リスクが懸念される。
  • サプライヤーに対して調達物のトレーサビリティを確認するとともに、当社グループの「サプライチェーンCSR行動指針」や「人権方針」を周知し、サプライチェーン上における人権侵害リスクの更なる低減を検討。
労働条件
地域住民の健康安全
土地の権利
  • 鉱山事業において、閉山時に従業員への補償(再就職補償等)や地域コミュニティや周辺環境への影響に留意が必要。また、閉山計画にそれらの点を織り込む必要あり。
  • すでに閉山計画を政府に提出済の鉱山事業においては、閉山計画制定の段階で長年にわたりコミュニティとも対話を実施しており、また、閉山後の採掘地の安定化に向けたリハビリ活動についても記載されていることを確認。
労働条件
  • 鉱山事業や製造事業において、従業員の声を拾い上げる仕組み(スピーク・アップ制度や目安箱等)を構築することが望ましい。
  • 当社グループの事業会社においてはSC Global Speak-Upが使用可能。一部の事業会社では必要に応じて、スピーク・アップ制度構築や目安箱設置を検討。
全般
  • 鉱山事業等では、当社がマイナー出資の事業が多い。人権侵害の発生や対策状況等の情報が、メジャー出資者から当社へも迅速に情報共有される体制が重要。
  • 一部事業において、事態発生後、取締役会やレポート等でメジャー出資者より当社宛に情報共有がされるよう、メジャー出資者と協議を実施。

2021年度に実施

メディア・デジタル事業部門

当社グループの事業における8つの顕著な人権課題
主な人権課題 特定された顕在的・潜在的リスク 評価・対応策
労働条件
強制労働・児童労働
  • サプライチェーン上(間接仕入先や業務委託先)で労働条件や強制労働等の人権課題が懸念される事業あり。
  • 人権方針や調達方針の策定と取引先への周知や取引先を介してのサプライチェーン上流における実態把握等の取り組みの強化につき検討。
差別・ハラスメント
  • デジタルマーケティング事業等において動画配信やエンタメ系コンテンツ、広告等の取り扱いがあり、差別的発言・表現が問題になり得るケースあり。
  • 製作者・出演者に対する注意喚起や教育プログラムの導入等、リスク防止・軽減策を検討。
個人情報・プライバシー
  • デジタルマーケティング等データ活用を進める事業や消費者向け事業が多く、個人情報漏洩やプライバシーの侵害に関するリスクに留意が必要。
  • 各事業において個人情報漏洩やプライバシー侵害に関するリスクを認識し、法令遵守を徹底して取り組んでいる点を確認。
知る権利、表現の自由
  • 海外通信事業において、通信遮断・通信傍受の指示・要請によって、知る権利や表現の自由等を侵害するリスクあり。
  • ミャンマー通信事業において、人権影響評価を踏まえ、人権の尊重に資する取り組みを継続。
新しい人権問題
(AI & Data)
  • DX/AIを推進するに際して、差別を助長するようなデータ使用・アルゴリズム使用による差別、プライバシー侵害等の人権リスクあり。
  • 比較的新しい人権リスクであり、人権侵害の事例、他社の対応、規制・ガバナンスの動向等につき詳細調査を実施。

生活・不動産事業部門

当社グループの事業における8つの顕著な人権課題
主な人権課題 特定された顕在的・潜在的リスク 評価・対応策
労働条件
(賃金・労働時間)
労働安全衛生
  • 不動産関連事業では、当社と直接の契約先のみならず、工事業者や保有不動産の管理業者等、サプライチェーン上の関係先における労働条件や労働安全衛生についても留意が必要。
  • 取引を行う工事業者や委託業者等に対してヒアリングや契約時における人権方針や調達方針の周知徹底等の対応について検討余地あり。
結社の自由と団体交渉権
  • 農地における従業員等、労働者の結社の自由・団体交渉権について、労働者の意見を吸い上げる仕組みの構築が重要。
  • 従業員へのインタビューを含む人権デューデリジェンスプロセスの構築や労働者含むステークホルダーからの意見受付窓口の設置と周知等の取り組みを実施している点を確認。
強制労働・児童労働
  • 国内事業において外国人技能実習生を起用する事業あり。
  • 食品流通はサプライチェーン上流(農地)における強制労働・児童労働に注意が必要。
  • 外国人技能実習生の起用状況の把握や労働条件・労働安全衛生に関して労働者に負の影響が及ばないように配慮している点を確認。今後も、実習生自身への定期ヒアリング等を通じて、労働環境の維持・改善に取り組む。
  • 顕在化後の調査・改善の実行ならびに潜在的リスクの高いサプライチェーンの特定・調査、等の取り組みを実施している点を確認。
土地の権利
地域住民の健康安全
  • 不動産関連事業では、土地の権利や地域住民の暮らしに影響を与える事態に備えた対応が必要。
  • 法令遵守、自治体・コミュニティへの事前説明・協議を実施している点を確認。

人権リスクの顕在化防止・軽減、フォロー・モニタリング

人権リスクへの対応については、そのリスクの深刻度や事業への関与度合い等、さまざまな要因によって対応方法や時間軸が異なることから、各SBUや事業会社が主体となり実施する必要があります。当社の部門別の人権デューデリジェンスで特定・評価したリスクについては、その重要性に基づき、各SBU・事業会社が優先順位付けをした上で、具体的なアクションプランに落とし込みPDCAサイクルを回していきます。その進捗については、住友商事グループの重要社会課題の長期目標・中期目標に向けた具体的な取り組みの進捗状況フォローに統合して継続的に確認しています。また、サステナビリティ推進部は、必要に応じて各SBU・事業の現場の対応を支援しています。

株式会社ディ・エフ・エフ

グリーバンスメカニズム(社外ステークホルダー向け通報窓口)

当社は、従業員を対象にした内部通報窓口のほか、一般の方やお客様を含む社外ステークホルダーの方々からのご意見やお問合せを受け付け対応しています。

2024年度からは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠して苦情処理プラットフォームを提供する一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)に正会員企業として加盟し、JaCERが提供する苦情処理プラットフォームでステークホルダーの方々から人権に関する様々な意見を受け付けています。専門性を有する第三者を介して意見を受け付け、公平性・透明性を向上し、受け付けた事案については、サステナビリティ・DE&I推進グループ長を含む経営陣やサステナビリティ推進委員会に報告のうえ、適時・適切に是正、再発防止を徹底しています。

また、事案の対応にあたっては、通報したことにより通報者や関係者が不利益を被ることがないこと、並びに通報者のプライバシー、機密情報の保護に努めます。

JaCERの通報フォーム

受け付けた事案に関する進捗及び対応結果については、JaCERホームページ上の苦情処理案件リストで公開されます。

株式会社ディ・エフ・エフ

英国現代奴隷法(Modern Slavery Act 2015)への対応

株式会社ディ・エフ・エフ

人権問題に関する研修を開催

当社グループは、当社グループ人権方針にある通り、幅広い国・地域、産業分野で事業活動を展開するに当たり、自社だけではなく、サプライヤーをはじめとする取引先や事業パートナーとともに、サプライチェーン全体で人権の尊重に努める責任があると考えており、2014年度以降、サプライチェーン全体での人権尊重への取り組みの必要性や事業活動を行う上で注意を要する人権問題について、当社グループ役職員を対象にした社外の有識者によるセミナーやe-learningを実施しています。セミナーの内容は、企業と人権との関わり、人権侵害によるレピュテーションリスクの顕在化事例、人権影響評価の方法等多岐にわたり、参加社員からは「当社グループは世界各地で多様な事業を推進しているため、継続的な啓発活動により一層の理解・浸透を図るべき」等の感想が寄せられています。人権の尊重における企業の果たす役割・責任は大きく、事業活動にかかわる社員一人ひとりの人権の尊重に関する理解・意識が重要であることから、研修等を通じて人権尊重の浸透・徹底に努めていきます。

株式会社ディ・エフ・エフ

AIと人権

先進技術である AIは人々の暮らしを豊かにする一方で、その開発・運用・利活用において、プライバシーの侵害やアルゴリズムによる差別など、人権問題につながる可能性が国際的にも指摘されています。当社グループでは、人権問題を防ぐ必要性を認識し、政府機関や学会などによる議論や指針、他企業の取り組み事例等を調査しています。当社は、様々なビジネスの現場でデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めていますが、顧客やユーザーのプライバシーの保護、不当な差別の防止など、人権侵害を引き起こさないように取り組んでいきます。

株式会社ディ・エフ・エフ

事例紹介

青果事業(Fyffes)での取り組み

当社グループの青果流通事業Fyffes社では、2019年より開始した3年間にわたる人権デューデリジェンスを完了しました。2022年には、前回に引き続き、外部専門家であるBSR社を起用してFyffes社として独自の人権影響評価(=Human Rights Impact Assessment, 以下HRIA)を実施し、2023年に調査結果を受領しました。最新のHRIAでは、主要なバリューチェーンと地域における人権問題の理解を深め、現在の管理レベルを評価・強化しました。さらに、コロンビア・ホンジュラス・グアテマラ3カ国のオペレーションについて人権への影響と是正機会について評価を行いました。具体的には、コロンビアとホンジュラスでは現地視察を、グアテマラではリモートで評価を実施し、リスク特性、またそれらリスクの影響緩和機会の特定を行いました。

HRIAに加え、Fyffesは産地5カ国の事業所周辺の地域コミュニティでコミュニティ・ニーズ・アセスメント(以下CNA)を実施し、現地の懸念点や関心事を認識すると同時に、Fyffesの事業が及ぼす可能性のある顕在的・潜在的リスクの管理・軽減を行いました。(CNAの一環として、2,200人以上に匿名インタビューを実施しました。)

社内苦情処理システムについては、すでに2019年4月に、従業員の母国語に対応した電話またはオンラインでの独立した苦情処理窓口を設置していますが、今後リスク緩和計画に基づき、全ての従業員に向けて、この窓口を認識してもらうよう周知活動を行っていきます。さらに、あらゆる強制労働と移民労働者の人権侵害は許容しないという考えのもと、サプライチェーンの主要部分である自社農園や仕入れ先の生産者、バナナの追熟工場等で、SMETA監査(Sedex Members Ethical Trade Audit)等の外部監査や、自社による内部監査を実施しています。

英国においては、人材派遣会社においても、派遣会社によるパスポートの保管等の強制労働の兆候がないか定期的な監査を実施しています。また、社内にHuman Rights Core Teamを組成し、人権リスクへの改善策を実行に移しています。

Fyffes社は、上述のHRIAを毎年実施することとしており(3年に一度は外部コンサルタントを起用)、2023年7月に競合他社や多くの顧客に先駆けて、人権報告書第2版(初版は2022年1月発行)を発行しました。

また、2021年にはサステナビリティレポートを発行しています。同レポートでは、「地球環境の保全」、「人々の豊かな生活」、「健康な生活のための健康な食事」、「責任ある企業活動のための行動規範」の4つの重点分野のもと、13の具体的なサステナビリティ目標が提示されています。これらのサステナビリティ目標は、国連の持続可能な開発目標9項目に沿ったもので、従業員、請負業者、サプライチェーンの中で働く全ての人々を対象とする人権研修実施を含めた、人権に関する6つの目標が含まれています。

同レポート第2版は2023年9月に発行されています。

サステナビリティレポート
サステナビリティレポート
人権レポート
人権レポート

食料事業でのサプライヤー管理

当社グループの各事業が関与するバリューチェーン全体での人権尊重が推進されるよう、サプライヤーをはじめとする取引先や事業パートナーに対しても働きかけています。

食料・食品の専門商社として、商品開発から世界各地における産地の選定、原料の調達、生産・加工の管理、物流・国内流通までを一貫して手掛ける住商フーズ㈱は、人権尊重等のサステナビリティにも配慮した安全・安心で高品質な商品を提供するために、サプライチェーン管理を行っています。

新規サプライヤーについては、まずデータ調査を行い、必要と判断された場合は、現地訪問も実施しています。既存のサプライヤーについても、コーヒー、粗糖、ゴマ等、特定国にて人権リスクが高いとされる商品は、それらの国に所在するサプライヤーに対して、より詳細なアンケート調査を実施し、問題がないことを確認しています。また、これらの管理サイクルをより強固なものにすべく、2019年より、既存サプライヤーについても、5年間に一度は実査等を実施する制度を導入しています。一方で、新型コロナウイルスの影響により、現地での監査実施が難しくなっており、リモート監査等の代替手法についても開始しています。

タイの鶏肉加工工場での人権監査

当社は、2019年3月に外部専門家を起用し、当社の取引先であるタイの鶏肉加工工場3カ所で人権監査を実施しました。タイでは、養鶏場、エビ・魚加工施設、衣料工場等の労働集約型産業において、外国人労働者への人権侵害の事例が指摘されています。当社は取引先加工工場を定期的に訪問し、人権等のルールが遵守されていることを確認していますが、特に外国人労働者の労働環境に焦点を当てて監査を実施しました。

監査では、工場や従業員寮を訪問し、鶏肉産業で指摘される一般的な人権リスクである強制的超過勤務、身分証明書の押収、労働安全衛生上の問題の有無を確認しました。また、カンボジアやミャンマー等、タイ国籍以外の従業員を無作為に選び、ヒアリングを行いました。監査の結果、3カ所とも外国人労働者に対する人権問題は確認されず、加工工場からは当社との積極的なコミュニケーションや、さらなる業務改善に対する高い意欲が示されました。

当社グループは、サプライチェーンにおける社会的責任を果たすために、引き続き人権リスクが懸念される国・地域の状況や業界慣行を踏まえ、重要サプライヤーとの取引における人権問題について配慮するとともに、監査を実施していきます。

南アフリカ共和国における黒人経済強化政策

南アフリカ共和国では過去にアパルトヘイトが行われていた背景から、黒人の経済活動への参画に対する権利と機会の不公平を解消し、地位の向上を目的とする政策があり、一定数以上の黒人企業が事業に参画することや、売上の一部を地域に還元することが義務付けられています。

同国で当社グループが出資しているDorper陸上風力発電事業会社は、この政策に沿って発電所近郊の幼稚園・学校及び病院の建屋改修や機材の供与、黒人女性が運営するレストランへの支援等を行い、地域住民の生活環境改善及び新規雇用創出に協力しています。また、これらの貢献を行うにあたっては、極力地域の業者を起用しています。同事業会社の株式の一部は地域住民が運営する現地スポンサーが保有しており、同社への配当を原資として地域住民の要望に応じた各種事業を行っています。

鉱山事業における地域住民との対話

資源開発プロジェクト推進にあたっては、地元地域の理解が必要不可欠です。マダガスカル・アンバトビーのニッケル鉱山の開発プロジェクトでは、開発当初より外交団や融資銀行団の協力も得ながら政府や地元住民と対話を積極的に行うことで、「このプロジェクトがマダガスカルの将来にとって極めて重要であること」を共有し、プロジェクトの意義の相互理解を深めるように努力しています。アンバトビー・プロジェクトでは、マダガスカル人の雇用とスキル向上も促進しており、全従業員中約9割がマダガスカル人(2022年実績)であり、マダガスカル従業員に対する技術移転、人材育成にも計画的に取り組んでいます。また、地域コミュニティの協力のもと、本プロジェクトによる事故等の未然の防止、発生した事故等への対応のために、人権侵害を含めあらゆる内容の苦情受付システムを設置しています。個人の秘密を保護しながら、苦情へ適切に対応しています。

2016年からは、人権と安全に関するプログラムVPSHR(the Voluntary Principles on Security and Human Rights)に、NGO、マダガスカル政府、他国大使館と連携しながら、アンバトビー・プロジェクトも参加しています。

プロジェクト内に建設した小学校

株式会社ディ・エフ・エフ