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Environment 環境

生物多様性

「生物多様性」についてご紹介している住友商事のサステナビリティページです。

基本的な考え方

住友商事グループの事業活動は、地球上の多様な生物とそれらのつながりにより生み出される生物多様性がもたらす恵みに大きく依存しています。従って、当社グループの環境方針で明示している通り、自然生態系等の環境保全ならびに生物多様性の維持・保全に十分配慮することは当社グループにとって重要な課題であると認識しています。生物多様性に重大な影響を与え得る事業活動に関して、どのように生物多様性に依存しているのか、また、どのような影響を与えているのかを把握した上で、生態系への影響を最小化し、回復にも寄与することに努めます。

新規事業の審査過程や既存事業のモニタリングにおいても、生態系への影響を含む社会・環境に関するリスクの評価や管理・改善状況の確認を行っています。

環境方針

株式会社ディ・エフ・エフ

TNFDベータ版フレームワークに基づくトライアル分析

当社は、2022年6月にTNFD(※)の理念に賛同し、その活動を支援しサポートするTNFDフォーラムに参画しました。

今般当社は事業活動における生物多様性への依存・影響を把握し、従来の取り組みを整理した上で今後の施策につなげるために、TNFDベータ版(v0.4)のフレームワークに基づいた分析を行いました。また、分析を通じて得たインサイトはTNFDへフィードバックしています。

  • Taskforce on Nature-related Financial Disclosures(自然関連財務情報開示タスクフォース)。自然資本及び生物多様性に関するリスクや機会を適切に評価し、開示するための枠組みを構築する国際的な組織。

本トライアル分析の特徴

当社では、TNFDの推奨する分析手法であるLEAPアプローチの手順に従ってトライアル分析を行いました。今回はニュージーランド(NZ)における森林事業を深堀分析対象とし、ニュージーランド国内の4事業拠点別に各地域性も踏まえた分析を行った点が本分析の特徴です。

LEAPアプローチ

当社事業と自然資本の関係性を俯瞰し、個別分析対象事業を選定

TNFDが推奨する分析ツールであるENCOREを用いて、事業本部別に一次スクリーニングを行い、金属資源の精錬や石油の採掘、農産物、不動産、森林に関連する事業においてリスクスコアが高いことを確認しました。また、ENCOREでの事業本部別分析の他、TNFDベータ版においては、森林経営やバイオ燃料関連事業等の「再生可能資源と代替エネルギー」が経済的影響を受けやすい優先セクターとして指定されています。それらの情報を踏まえ、自然関連の依存・影響・リスクが高い領域は原料調達を含むサプライチェーン上流であると整理し、本トライアル分析はニュージーランドで当社が保有するSummit Forests New Zealand社(以下、SFNZ社)を対象に行うこととしました。

分析対象の事業会社

社名 Summit Forests New Zealand Ltd. SUMMIT FORESTS
創業年 2013年
事業 森林の保有・管理輸出・伐採した自社材及び他社材を国内製材工場に販売または輸出
出資金 NZD137百万(約102億円) / 当社出資比率100%
事業拠点 Auckland / Kaitaia / Gisborne / Coromandel
伐採可能面積 5万ha(主な生育樹種:ラジアータパイン)

一般的な森林事業の自然に対する依存・影響を確認

森林事業の分析を行うに当たり、まずTNFDの推奨する分析ツールであるENCOREや論文等の情報を用いて、一般的な森林事業における依存・影響について確認した結果、「気候」と「土壌」に依存する事業であることが分かりました。

また、特にニュージーランドにおける森林事業は「安定的な気候」と「生育に適した土壌」に大きく依存すると整理しました。一方で、自然に与える影響の要素としては、過度な伐採や化学品の過剰利用による周辺地域の生態系破壊のリスクも懸念される業態でもあるため、「育林・伐採」「肥料・農薬」と整理しました。

一般的なニュージーランドにおける森林事業で考えられる自然資本への依存・影響
一般的なニュージーランドにおける森林事業で考えられる自然資本への依存・影響

SFNZ社の自然資本に関するリスクを特定、その重要度を判断

1) 自然資本に関する事業リスクを整理

TNFDのフレームワークが示すインパクトドライバー・自然の状態・生態系サービスを、SFNZ社の森林事業に当てはめ分類した結果、9項目のリスクを特定しました。なお、分類にあたっては、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)の森林事業リスクの例示を参考にしています。

例:絶滅危惧種への影響に関するリスク分析
例:絶滅危惧種への影響に関するリスク分析
SFNZ社の社有林区(左)と生物多様性ホットスポットエリア(右)(活用ツール:IBAT)
自然資本に関する事業リスクを整理

2) 各事業拠点別に分析し、重要度の高い事業リスクを特定

特定した9つの事業リスクに対し、SFNZ社がニュージーランド国内で事業を行う4拠点別に、IBATをはじめとするTNFD推奨ツールを用いてリスク分析を行い、各リスクを、「事業に対する影響の程度(財務・法令の観点)」と「生じうる可能性(事業・リスク項目の関連性)」をそれぞれ定性的にマトリクス評価しました。その結果、「伐採・開発に関するリスク」、「自然災害発生に関するリスク」、「絶滅危惧種への影響に関するリスク」、「先住民の権利侵害に関するリスク」の4項目がSFNZ社の事業において重要な事業リスクであると特定しました。

SFNZ社の森林事業において特に重要な自然資本リスク

SFNZ社の自然資本に関する事業機会を特定、その重要度を判断

1) 自然資本に関する事業機会を整理

事業リスク特定のアプローチと同様に、TNFDベータ版フレームワークで機会分類として挙げられているサブカテゴリ―を森林事業にあてはめたところ、6つの事業機会を識別しました。

2) 重要度の高い事業機会を特定

特定した各事業機会を「事業に対する影響の程度(財務・法令等の観点)」と「生じうる可能性(事業・リスク項目の関連性)」についてそれぞれ定性的にマトリクス評価し、「木材関連市場の変化(CO2吸収クレジット)」、「木材生産性の向上」、「木材に関する認識の変化」をSFNZ社にとって重要度の高い事業機会として特定しました。

SFNZ社の自然資本に関する事業機会を特定、その重要度を判断

指標と目標の設定を検討

特定・整理をしたSFNZ社の事業における重要リスク・重要機会の項目をもとに指標と目標の設定を検討し、重要リスク項目については今後の事業運営における目標を設定、重要機会項目についてはそれぞれの一般的な事業活用例を整理しました。

重要リスクに対する事業目標の設定

SFNZ社が持つ事業リスクにおいて、生じうる可能性・事業に対する影響の程度が高く、当社として特に重大なリスクと認識している項目に対し、昆明・モントリオール生物多様性枠組(以下、GBF)をもとに、森林経営計画書記載の取り組みを踏まえて具体的な事業目標を設定しました。なお、すでに目標達成に寄与する活動にも多く取り組んでおり、それらの活動については継続していくことを目指します。

リスク項目 参考とするGBF指標 目標 すでに取り組んでいる、目標達成に寄与する取り組み
事業にかかわる重要リスク 先住民の権利侵害 ターゲット22
  • 先住民の権利を配慮した管理プロセスの策定・運営
  • 先住民族との幅広いビジネスパートナーシップの締結
  • 地元コミュニティに対する雇用機会の創出、職業訓練
  • 土地保有者をサステナブルな森林管理者にするための支援策の実施
絶滅危惧種への影響 ターゲット4
  • 種の絶滅を阻止し、絶滅リスクを大幅に減らす取り組みの実施
  • 絶滅危惧種保護のための運用ガイドラインを策定し、当社林区で発見される可能性のある希少種・絶滅危惧種を特定
  • 従業員が絶滅危惧種を発見した際の運用ガイドラインを策定・周知
  • 在来種の遺伝的多様性を維持及び回復するための管理
  • Kiwiの生息数を監視するための調査実施
  • 希少な動植物種の保全、自然保護局と連携したバイオコントロ―ルの実施
伐採・開発 ターゲット1
  • 先住民及び地域社会の権利を尊重した管理プロセスの策定・運営
  • 伐採計画が生物多様性に与える影響の緩和策を地元コミュニティ代表者と策定
自然災害発生 ターゲット11
  • 河川・洪水・火災リスクに対する被害低減策の策定
  • ニュージーランド当局が主導する、河川・洪水リスク対策を目的とした森林事業のオペレーションに関連するルール策定・変更への関与・提言
  • 火災防止のための計画策定
  • 防火帯の維持

重要な事業機会の整理

SFNZ社が持つ事業機会において、生じうる可能性・事業に対する影響の程度が高く、当社として特に重要と捉える事業機会を整理し、それらについては以下の具体的な事業機会例を整理しました。

具体的な事業機会(例)

木材関連市場の変化(CO2吸収クレジット)

ニュージーランド排出権取引制度への正式参入

現存している森林資源のCO2吸収価値をクレジット化して販売することで、新たな収益源にするだけでなく、気候変動対策と生物多様性保全の両面に貢献できると言われています。

Summit Forests New Zealand社として保有する6.6万haの森林吸収量を活かした、ニュージーランド排出権取引制度(NZ-ETS)への参入により、新たな収益源の拡大が見込まれます。

木材に関する認識の変化

FSC認証取得の維持・促進による収益拡大

ニュージーランドでは、政府による厳格な森林管理制度が確立されており、加えて政府主導の合法的保証制度が整備段階にあります。さらに、国全体としてFSC認証の取得・促進が進んでいる状況です。

Summit Forests New Zealand社では大部分の林区でFSC認証を取得しているため、社会・消費者の認識の変化によって認証材の需要が高まることにより、収益拡大に寄与する可能性が考えられます。

木材生産性の向上

林業のデジタル化・スマート化

林業のIoT化は、森林の健康状態を適切に把握できるため、良質な木材の安定生産に繋がります。

6.6万haを保有・管理しているSummit Forests New Zealand社では、GIS(地理情報システム)を用いた地形把握を行っておりますが、森林の資源量をレーザー計測する技術を導入すること等によって、収益拡大に繋がる可能性があります。

トライアル分析を終えてみて(当社からTNFDに対するフィードバック提出内容)

トライアル分析のプロセス・結果を踏まえ、TNFDフレームワークに基づく開示を投資家の皆様にとってより有用な情報とするため、以下2点を当社よりTNFDへフィードバックとして提出しました。

  1. 規範的シナリオがない中で、自社で各事業に対するシナリオを設定し開示する難易度が高い
  2. 事業領域が多岐にわたるコングロマリットにおいては優先分野の特定が課題であるため、コングロマリット企業におけるLEAP分析のガイダンスが必要
株式会社ディ・エフ・エフ

“No Net Loss, Net Gain”を目指すアンバトビー・プロジェクト

ニッケル、コバルト等の供給拡大に向けて、2007年からマダガスカル共和国で建設を進めてきた世界最大級の鉱山開発事業である「アンバトビー・プロジェクト」では、”No Net Loss, Net Gain”を環境目標に掲げ、独自の生物多様性プログラムを実施しています。

アンバトビー・プロジェクトは、採掘場や精錬工場、パイプライン等の多くの施設を新たに建設・運営するため、周辺の環境に与える影響も少なくありません。特にマダガスカルには、1,000種もの希少動物が生息する世界的にも貴重な自然環境が残されています。そのため、アンバトビー・プロジェクトでは、こうした自然環境に対する十分な配慮のもとに開発・運営を進めるため、全てのサイトへの影響が考慮された生物多様性プログラムを実施しています。プロジェクトの計画・実行に際しては、 ISO14001に基づいた「アンバトビー環境マネジメントシステム(EMS)」に則った管理を行っており、マダガスカルの国内法の遵守はもちろん「世界銀行セーフガード・ポリシー」をはじめ「国際金融公社(IFC)パフォーマンス・スタンダード」「世界保健機構(WHO)基準」「赤道原則」等、さまざまなガイドラインに準拠した環境マネジメントを実施しています。

また、アンバトビーEMSのもと、動植物・海洋生態系を含むいくつかの重点分野を定め、建設・操業・閉山時に工場・港湾施設等、事業に関連する地点において管理計画を策定し、計画に基づいた運営も行っています。例えば、鉱区の開発にあたっては、約1,600haの鉱山サイトの周辺に、樹種に棲み着いた生息動物が移動できるようバッファーゾーン(緩衝地帯)を設けました。その他、 国際環境NGO等と共同で実施した生態調査の結果、保護が必要と判断された絶滅危惧種等については、保護区内に移植したり、養魚システムで飼育したりする等、さまざまなプログラムを実施して生態系への負荷低減を図っています。

さらに、生物多様性プログラムの一環としては、政府や地域コミュニティ、保全・開発NGOと協力し、IFC及びBBOPの基準を適用して大規模な「生物多様性オフセットプログラム」も推進しています。これは開発による生態系への影響を、別の生態系を復元・創造する等し、緩和しようというアプローチであり、具体的には開発地域に類似した生態系を持つアンケラナ地区で森林6,800haの保全を行っている他、採掘場近隣エリアの保全やパイプライン埋設後の再植林、閉山後に向けた採掘場の再植林等も含め、4カ所の保全エリアで、インパクトを受けたエリア面積の約9倍の総面積(14,000ha以上)の保全によりNet Lossをオフセットしました。なお、オフセットを含む生物多様性プログラムにおいては、事業による影響だけでなく、それ以前に受けた影響についてもコントロールする包括的アプローチを取っています。

Ambatovy Sustainability Report2021

希少植物の調査及び保全
希少植物の調査及び保全
希少種コクレルシファカ
希少種コクレルシファカ
伐採後の再植林
伐採後の再植林
希少種カンムリシファカ
希少種カンムリシファカ
株式会社ディ・エフ・エフ

アンバトビー・プロジェクトを通じて参画するBBOP(ビジネスと生物多様性オフセットプログラム)

Business and Biodiversity Offsets Program(BBOP:ビジネスと生物多様性オフセットプログラム)は、企業や政府、NGOを含む専門家等が参画し、生物多様性オフセットに関する国際基準を作成しようというイニシアチブです。BBOPは成功裏に終了し、生物多様性条約においても参照される等、生物多様性オフセットに関する国際基準となっています。マダガスカルのアンバトビー・プロジェクトは現在もこの基準に準拠し、生物多様性保全と地域住民の生活とのバランスを取りながら、活動を継続しています。

BBOPオフセットの10原則

1 ミティゲーション・ヒエラルキー
(適切な回避策、軽減策、修復策の後にオフセットを実施する)
2 オフセットの限界(生物多様性の置換不可能性と脆弱性により、オフセットでは完全に代償できない影響がある)
3 景観的観点(生物多様性の生物、社会、文化的価値の総合的情報を考慮した保全効果を実現するためのオフセット立案と実施)
4 ノーネットロス(結果としての生物多様性のノーネットロス、望ましくはネットゲイン)
5 追加的な保全効果(オフセット未実施の結果以上の保全効果)
6 ステークホルダー参加(オフセットにかかる意思決定へのステークホルダーの参加)
7 衡平性
(権利、責任、リスク、便益の衡平な分配と先住民族とローカルコミュニティへの配慮)
8 長期的効果(プロジェクト影響の続く限りの長期的効果、望ましくは永続性の確保)
9 透明性(オフセット立案、実施、結果の公開と時宜を得た透明性の確保)
10 科学的、伝統的知識(科学的情報と伝統的知識に裏打ちされたプロセス)
株式会社ディ・エフ・エフ

風力発電事業におけるバードストライク対策

南アフリカEastern Cape地方の山間部で約130km2の土地を利用して行っているDorper風力発電事業では、付近に生息する鳥やコウモリ等の飛翔生物が風車に衝突する事故(バードストライク)の対策に取り組んでいます。

風車は放牧地に建設されており、家畜等の死骸に鳥が集まることがバードストライクの原因であるため、発電所内の動物の死骸処理を徹底するとともに、絶滅危惧種と思われる鳥類が風車付近を迂回していないかの目視確認、発見した場合の風車の非常停止通知の発信等を地元住民を雇用して行っており、野生生物保全と風力発電事業の両立を目指しています。

南アフリカDorper風力発電
南アフリカDorper風力発電
株式会社ディ・エフ・エフ

バードフレンドリー®認証コーヒー事業

当社グループは、生物多様性に配慮し、農家の安定収入にもつながる取り組みとして、2004年からバードフレンドリー® 認証コーヒー(以下、BF®認証コーヒー)の輸入・販売を手掛け、2014年度からは住商フーズにてBF®認証コーヒーを取り扱っています。BF®認証コーヒーは、自然林と同様のシェード(木陰)を保ちながら栽培することで、環境保全やそこで羽を休める渡り鳥の保護につながる取り組みです。米国スミソニアン渡り鳥センターがその認証基準を設定し、 現在、全世界で12カ国(※1)49農園・農協(2023年6月現在)が認証を受け、収益の一部は、同センターの渡り鳥の研究・調査・保護活動に使われています。

バードフレンドリー

本事業は、2019年、国際自然保護連合日本委員会が認定する「国連生物多様性の10年日本委員会(※2)(UNDB-J)認定連携事業」に認定されました。UNDB-Jの認定連携事業になったということは、生物多様性保全活動として重要な活動であり、また、「愛知目標(※3)」の達成に向けて成果を上げてきた活動であることを意味します。
今後も本事業を通して、世界中の渡り鳥保護・生態系保護に貢献していきます。

  1. 12カ国:エチオピア、ペルー、エルサルバドル、コロンビア、グアテマラ、ニカラグア、ボリビア、ホンジュラス、インド、タイ、メキシコ、ベネズエラ
  2. 国内のあらゆるセクターの参画と連携を促進し、生物多様性の保全と持続可能な利用に関する取り組みを推進するために2011年9月に設立された委員会。
  3. 生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で採択された、生物多様性保全のための新たな世界目標。
BF ®認証コーヒーの収穫
BF ®認証コーヒーの収穫
この事業は、「国連生物多様性の10年日本委員会(UNDB-J)」が推奨する事業として認定を受けています。
この事業は、「国連生物多様性の10年日本委員会(UNDB-J)」が推奨する事業として認定を受けています。
株式会社ディ・エフ・エフ