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Environment 環境

気候変動

「気候変動」についてご紹介している住友商事のサステナビリティページです。

気候変動問題に対する方針

気候変動問題は、持続可能な社会の実現のために世界が一丸となって乗り越えなくてはならない重大な課題であり、我々企業はその中で大きな役割を果たすことが求められています。
2019年、気候変動問題の克服に向けて我々が果たす役割を明確にすべく、当社グループの「気候変動問題に対する方針」を取締役会にて決議し、制定しました。
気候変動問題を克服するための世界的な取り組みがますます重要性を増していることを踏まえ、2020年の改訂を経て、2021年に方針の見直しを行いました。

基本方針

  • 2050年に住友商事グループのカーボンニュートラル化を目指す(※1)。
    社会全体のCO2排出量削減・Negative Emission化(※2)による、持続可能なエネルギーサイクル実現のための技術・ビジネスモデルを開拓する。
  • 当社事業のCO2排出の削減・吸収に加え、ビジネスパートナーや公共機関などと協力した取り組みや提言などを通じて、社会のカーボンニュートラル化に貢献する。

事業における方針

  • 社会全体のCO2排出削減に資する再生可能エネルギー化やエネルギー活用の効率化、及び燃料転換を促進する。
    また、再生可能エネルギーを主体とした新たなエネルギーマネジメントやモビリティサービスなどの提供や、水素社会の実現に取り組む。
  • 発電事業については、地域社会における経済や産業の発展に不可欠なエネルギーを安定的に供給するとともに、経営資源を、より環境負荷の低い発電ポートフォリオに継続的にシフトする。(2035年:持分発電容量ベースで、石炭 20%、ガス 50%、再エネ 30% (※3))
  • 火力発電、化石エネルギー権益の開発については、2050年のカーボンニュートラル化を前提として取り組む。
    石炭火力については、新規の発電事業・建設工事請負には取り組まない。また、石炭火力発電事業については、2035年までにCO2排出量を60%以上削減(2019年比)し、2040年代後半には全ての事業を終え石炭火力発電事業から撤退する。
    一般炭鉱山開発事業については、今後新規の権益取得は行わず、2030年の一般炭鉱山からの持分生産量ゼロを目指す。
  1. カーボンニュートラル化の対象となる事業の範囲は以下の通り。
    [Scope1・2] 住友商事単体及び子会社の直接的CO2排出と、各社の使用するエネルギーの生成に伴う間接的CO2排出。(ただし、発電事業については持分法適用関連会社の排出も対象に含める)
    [Scope3] 住友商事単体及び子会社、持分法適用関連会社の化石エネルギー権益事業で生産されたエネルギー資源の、他者の使用に伴う間接的CO2排出。
    尚、カーボンニュートラル化とは、当社グループの事業によるCO2排出と、CO2排出削減への貢献を合わせたネットCO2排出量をゼロとすることを指す。
  2. Negative Emission化とは、過去に排出され、大気中に蓄積したCO2を吸収・回収・除去することを指す。
  3. 2020年現在:石炭 50%、ガス 30%、再エネ 20%
株式会社ディ・エフ・エフ

ガバナンス

TCFD提言に基づく情報開示

ガバナンス

気候変動問題への対応の体制

  • 取締役会は、当社グループの幅広い事業活動において気候変動問題に関連して生じるさまざまな機会とリスクについての各事業分野の戦略とその進捗状況、ならびに事業ポートフォリオ全体のリスクの状況について定期的に報告を受け、適切な取り組みが為されているかモニターしています。取締役会は、当社グループの気候変動問題に対する方針の策定・改訂につき決議し、気候変動問題への対応方針に係る重要な個別案件の実施の是非についても、執行の最高意思決定機関である経営会議やその諮問機関である全社投融資委員会での審議・決定を経て、取締役会にて審議を行っています。
  • また、当社グループでは、気候変動問題等の社会課題への対応を含めた、中期経営計画における各事業分野の戦略を、年に2回、経営会議メンバーが参加する戦略会議で議論しています。
  • 気候変動問題の機会とリスクについては、各事業部門・イニシアチブの取り組みに加え、社会課題への対応に関する専門組織であるサステナビリティ推進部や、当社の経営計画全体や重要施策の企画を行う経営企画部、リスク管理担当組織が共同して全社的方針の立案や必要な施策の推進を行っています。グループ内の調査機関や各営業組織、海外拠点等からもたらされる情報を基に、全社的な対応を議論しています。
  • サステナビリティ推進委員会(委員長:企画担当役員/事務局:サステナビリティ推進部)にて、世界的な気候変動緩和の動向をフォローするとともに、全社経営戦略推進サポート委員会(委員長:企画担当役員/事務局:経営企画部)にて、気候変動問題に関する戦略やリスク管理の施策について議論し、両委員会からの報告、付議を受けて、経営会議にて気候変動問題の対応についての重要な意思決定を行っています。
  • また、2023年3月より、ESGに関する社外有識者で構成される「サステナビリティ・アドバイザリーボード」を設置し、当社の気候変動問題への対応を含むサステナビリティ経営全般について助言・提言を得て各種取り組みのさらなる強化を図っています。
気候変動問題への対応の体制図
株式会社ディ・エフ・エフ

戦略:気候変動に関するリスクと機会(含むシナリオ分析)

当社事業のポートフォリオシフトイメージ

気候変動の緩和は、持続可能な社会の実現のために克服しなくてはならない重大な課題です。課題解決のためには、再生可能エネルギー等のクリーンエネルギーへの転換や、産業全般や家庭における省エネ化等を通じて、CO2やメタンといった温室効果ガスを極力排出しない社会に移行する必要があります。加えて、森林や海洋植物等、自然資本によるCO2吸収量を維持・回復させるとともに、CO2を資源と捉え、新たな技術や事業モデルを通じて回収して固定・利活用すること等によって、残余排出量と吸収量を均衡させ、持続可能なエネルギーサイクルを実現することが必要です。
当社グループは、2050年までにグループのカーボンニュートラル化を実現することを長期目標として掲げています。その達成に向けてマイルストーンを設定するとともに、インターナルカーボンプライシングの活用、エネルギーイノベーション・イニシアチブ(EII)を軸とした次世代事業の創出等を着実に進めています。また、脱炭素化の動きはグローバルに展開する多様な産業に広がっています。当社グループは、それに伴う技術やビジネスモデルの変化がもたらすリスクに対応する一方、変化によって生まれる社会的ニーズを捉え事業機会を開拓していくことで、事業ポートフォリオを着実にシフトしていきます。 

気候変動問題への対応の体制図

インターナルカーボンプライシング(ICP)の活用

【目的】

当社の気候変動への取り組みを後押しするための施策。気候変動関連の潜在的なリスクと機会が当社全体に及ぼす影響や対応状況を定期的にモニタリングしています。その内容をサステナビリティ推進委員会等で報告・議論の上、経営会議・取締役会へ報告し、必要に応じて追加施策の検討・導入を行います。個別事業においても、気候変動関連の中長期的なリスクと機会を確認し、その対応策を早期に検討できるようにしています。

【活用概要】
  • 1.5℃シナリオ(NZEシナリオ(※))の炭素価格も用いて、当社グループのカーボンニュートラル化目標の対象事業によるCO2排出量に対する炭素排出コスト、事業を通じたCO2の吸収・固定・活用等に伴う環境価値、CO2削減貢献に資する事業等を一元的に可視化の上、年次でモニタリングします。
  • 個別の投資案件においても、将来の潜在的なリスクや機会が大きい新規・既存案件を対象に、炭素排出コスト・環境価値・CO2削減貢献量の可視化や、1.5℃シナリオ等を用いた分析を通じて、将来の事業への影響有無やその対応策を確認します。
  • Net Zero Emission Scenario。
    国際エネルギー機関による世界全体での2050年ネットゼロ達成(産業革命以降、2100年までに1.5℃上昇)を想定したシナリオ。

事業ポートフォリオシフトの着実な推進(当社グループのカーボンニュートラル化)

2050年までの当社グループのカーボンニュートラル化に向けて、下図の通りCO2排出削減の具体的なマイルストーンを策定し、着実に推進しています。2022年度には、化石エネルギー権益事業の一部を売却し、再生可能エネルギー事業の推進等を通じて事業ポートフォリオのシフトを進めると同時に、既存の石炭火力発電事業の脱炭素化・低炭素化等に向けて検討を進めました。

事業ポートフォリオシフトの推進図

News① <エネルギー転換の加速に向け、インドネシアの国営電力会社と基本合意書を締結>

経済発展と人口増加が進むインドネシアでは、2060年までに電力需要が5倍~7倍に増大することが想定される一方で、現在約18億トン排出されているGHGをネットゼロとすることを目指しています。当社グループは、同国におけるエネルギーの安定供給とカーボンニュートラル化を支援すべく、再生可能エネルギー発電事業の新規開発を加速するとともに、既存石炭火力発電所の早期移管・停止に向けた検討を推進。再生可能エネルギーを必要とするグリーン産業の投資誘致を含め、総合的なエコシステムを共創していきます。

News② <2030年に向けた再生可能エネルギー供給の拡大目標を上方修正>

実現性の高いパイプライン案件が増加していることを踏まえ、持分発電容量についての目標を従来の「3GW以上」から「5GW以上」に更新しました。インフラ事業部門が展開する再生可能エネルギー発電事業の拡大や、EIIが目指す「脱炭素・循環型エネルギーシステム」における次世代事業の創出を通じて、持続可能なエネルギーサイクルの基盤となる事業を構築していきます。

社会のカーボンニュートラル化への貢献(EIIを軸とした次世代事業の創出)

脱炭素・循環型エネルギービジネス構築に向け、EIIでは重点3分野における事業開発と事業部門との組織横断的な取り組みを推進しています。カーボンニュートラル社会の実現に資する次世代事業の創出に向け、多様なステージの事業開発がグローバルに進捗しています。
2022年度には海外組織も立ち上げてグローバルな体制を整えるとともに、インドネシアEX(Energy Transition)部を含む3つのビジネスラインを新設しました。社内外の多様な知見を活かし、従来の地域・事業部門の枠組みを超えた組織横断的な掛け合わせによる事業開発を推進し、当社グループの将来の収益基盤の構築を目指します。

重点3分野における事業基盤の構築

重点3分野における事業基盤の構築図

主な取り組み・進捗

主な取り組み・進捗図
  • 気候変動問題は、政策・法規制や、技術開発、市場動向、市場における評価等の変化によってもたらされる移行リスクと、気候変動に伴う自然災害や異常気象の増加等によってもたらされる物理的リスクに大別されます。
  • 移行リスクについては、将来的に低炭素・脱炭素化のための規制が導入され、長期的には、国際的な議論の進展や各国の温室効果ガス削減計画の見直し、幅広い産業分野での技術、市場の変化等が、当社グループの事業環境にさまざまな変化をもたらすことが考えられます。当社ではリスクが相対的に大きいと考えられる分野として、発電事業やエネルギー・資源関連事業、自動車、航空機、船舶関連事業、鉄鋼、化学品、セメント、アルミ製錬、不動産、森林等の事業への影響を分析しています。これらの分野では事業活動に影響を及ぼすようなリスクが存在すると想定され、定期的なシナリオ分析を通じてリスクの大きさを認識し、然るべき対応策を検討することで、業績への負の影響を最小限にとどめるよう努めている他、脱炭素・循環型エネルギーシステムの構築等、事業機会の開拓に資する取り組みを強化しています。
  • 物理的リスクについては、事業活動に継続的・慢性的影響を与える慢性リスク(平均気温の上昇、洪水パターンの変化、海面の上昇等)、突発的な被害を発生させる急性リスク(暴風雨・洪水・干ばつ・ 森林火災等の異常気象の激甚化等)に大別され、生産拠点の設備や労働条件に関する直接的影響や、原材料・製品の幅広いサプライチェーンへの間接的な影響等、さまざまな影響をもたらす可能性があります。当社では幅広い分野・地域で事業を展開する中でリスクが相対的に大きいと考えられる分野として、再エネを含む発電事業、資源・エネルギー権益事業、不動産事業、農業、森林事業に焦点を当て事業への影響を分析しています。地域の天候や地理的要因等による事業への影響に関する投資時の確認、事業参画後の継続的なアセスメント、契約上の責任範囲の明確化、損害保険契約等により、リスクを管理しています。

シナリオ分析

  • 当社は、気候変動問題を世界が直面する重要な課題の一つとして捉え、気候変動の影響の大きな分野にかかわる事業を抽出し、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に沿った形でシナリオ分析を実施しています。
対象セクター
  • 気候変動の影響を受けやすく、売上規模が大きい事業として、森林事業を新たに追加いたしました。
  • また、対応策を強化するために、エネルギーや資源事業については、その内訳を細分化し、より詳細な環境変化について分析を行いました。
検討シナリオ・温度帯
  • これまでの各国の政策や技術革新の進捗を踏まえ、IEAの設定するシナリオの内容が見直されました。
  • 世界の実情に沿ったリスク・機会の点検を行うため、以下の最新シナリオを採用いたしました。昨年からはSDSが除外され、STEPSが追加となりました。また、森林事業の追加に伴い、PRIのシナリオも新たに参照しております※。
    • STEPS:現行政策シナリオ(2.5℃上昇)
    • APS:公約シナリオ(1.7℃上昇)
    • NZE:ネットゼロシナリオ(1.5℃上昇)
    • FPS:予想政策シナリオ(1.8℃未満上昇)
    • RPS:1.5°必要政策シナリオ(1.5℃上昇)
  • 各シナリオの()内の気温上昇の値は、産業革命以降2100年までに上昇すると想定される気温幅です。

戦略:気候変動に関する移行リスクと機会

気候シナリオの選定

  • 事業環境が大きく変化した際に、新たなビジネス機会及び事業の耐性を客観的に評価する観点から、主にIEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)及びPRI(Principles for Responsible Investment:責任投資原則)等を参照し、以下シナリオを用いて主に2050年までの事業への影響を分析しています。これらシナリオは、世界的な気候変動緩和の長期的な動向について、複数のシナリオを想定した場合に、各セクターにおいて起こりうる事業環境変化の一例として参照したものであり、当社の経営方針や事業戦略の前提を示すものではありません。
重点3分野における事業基盤の構築図
  • 当社グループ全体に係る外部環境変化も踏まえて分析を実施
    2022年11月のCOP27(国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議)において決定された、1.5℃目標の達成に向けた取組の強化を求める「シャルム・エル・シェイク実施計画」や「緩和作業計画」等により、2021年の「グラスゴー気候合意」の内容を踏襲し、緩和、適応、ロス&ダメージ、気候資金等の分野で、締約国の気候変動対策の強化を求める内容となり、早期のカーボンニュートラル社会実現を目指す取り組みとして、各国・地域で個別産業の脱炭素化、Scope3を含むサプライチェーン全体での排出量削減、LCA(Life Cycle Assessment)を踏まえた脱炭素製品の拡大に加え、炭素価格設定やサステナブル金融推進等の産業横断的な脱炭素化が促進されています。
    各国・地域の排出量取引制度・炭素税の導入・強化は、欧州等で検討されている炭素国境調整措置と相まって、国・地域の枠を超え、さまざまな産業のサプライチェーン全体に影響を及ぼす可能性があります。炭素価格の見通しは地域ごとに異なり、2050年時点では、STEPSシナリオでは、29~113ドル/t-CO2、APSシナリオでは、47~200ドル/t-CO2、NZEシナリオでは、180~250ドル/t-CO2と予測されており、将来の炭素税や排出権取引における炭素価格の水準は、炭素集約型の産業を中心に事業のパフォーマンスに大きな影響を与えます。また、各国・地域では、低炭素・脱炭素化技術の活用を金融面から後押しするために、欧州タクソノミー等サステナブル金融のガイドライン整備が進んでいます。
    当社事業ポートフォリオにおける、炭素集約型の製造事業の比重は限られていることから、上記施策による直接的影響は深刻ではないと考えられるものの、当社は、ISSB(International Sustainability Standards Board:国際サステナビリティ基準審議会)等の国際的な開示基準を参照するとともに、気候変動リスク・機会に係る最新動向をモニタリングし、当社事業が関与するサプライチェーン全体への影響を継続的に注視し、リスク最小化への対応と脱炭素化に伴う技術やビジネスモデルの変化を捉えた、新たなビジネス機会の開拓を進めていきます。

シナリオ分析を実施する当社事業の特定

  • 当社事業のうち、気候変動緩和に係る事業環境変化の大きなセクターにかかわる事業について、原則として事業規模の大小にかかわらず、シナリオ分析の対象事業を特定しております。
  • 今年度は、「エネルギー」「資源」「輸送」「素材」「不動産」「その他(森林)」を対象事業として、ISSB(International Sustainability Standards Board:国際サステナビリティ基準審議会)の気候関連開示基準(※)に加え、IEA「World Energy Outlook2022」や「Energy Technology Perspectives2023」、PRI「The Inevitable Policy Response 2021」等を参照し、技術変化、規制導入の動向等も参照・確認の上、シナリオ分析を実施しています。
  • 2023年6月26日に公表された基準を参照しています。
シナリオ分析

シナリオ分析対象として特定した事業セクター

  • エネルギー:石炭火力発電、ガス火力発電、再生可能エネルギー、次世代エネルギー(水素・アンモニア・合成燃料、エネルギーマネジメント・蓄電池、CCUS)
  • 資源:一般炭、原料炭、鉄鉱石、天然ガス・LNG、ニッケル、銅
  • 輸送:車、船舶、航空機
  • 素材:鉄鋼(鋼材/鋼管)、セメント、化学品、アルミニウム
  • 不動産:オフィスビル/集合住宅販売
  • その他:森林

シナリオ分析の結果

  • シナリオ分析の対象として特定した「エネルギー」「資源」「輸送」「素材」「不動産」「その他(森林)」セクターに関する事業環境認識は、IEA等が提示する主なシナリオに記載された各セクターの将来的な市場動向等を2030年、2050年において「大幅増加~増加」「増加~やや増加」「中立」「やや減少~減少」「減少~大幅減少」の5段階で評価したものです。これらシナリオが示す需要動向や事業環境の見通しは、多くの潜在的リスクや不確定要素を含んでいます。
  • 各セクターに関する当社方針・取り組みは、それらシナリオが示すさまざまな事業環境変化の要因や不確実性、当社事業固有の状況等を踏まえた方針・取り組みを記載したものです。また、当社は、火力発電、化石エネルギー権益の開発について2050年のカーボンニュートラル化を前提として取り組んでいますが、それらの事業が含まれる、「石炭火力発電」、「一般炭」、「天然ガス・LNG」については、当社利益規模やエクスポージャー(※)等の定量指標を表示しております。
  • シナリオ分析の結果、2030年、2050年それぞれにおいて3つのシナリオのどれが実現しても当社は対応可能であり、事業のレジリエンスを確認しております。次ページに各シナリオにおける主要な事業環境の例と当社方針・取り組みをまとめております。
  • 連結総資産および持分法向け保証

【参照シナリオ(マクロ環境)の表示】

照シナリオ(マクロ環境)の表示

【参照シナリオ(マクロ環境)の需給変化傾向】

  • 大幅増加~増加:大幅増加~増加
  • 増加~やや増加:増加~やや増加
  • 中立:中立
  • やや減少~減少:やや減少~減少
  • 減少~大幅減少:減少~大幅減少

【事業における定量指標】

事業における定量指標

シナリオ分析の結果(サマリ)

参照シナリオ(マクロ環境)
セクター 事業 2030年 2050年
エネルギー 石炭火力発電 やや減少~減少 減少~大幅減少
ガス火力発電 中立 やや減少~減少
再生可能エネルギー 大幅増加~増加 大幅増加~増加
次世代エネルギー 水素・アンモニア・合成燃料 大幅増加~増加 大幅増加~増加
エネルギーマネジメント・蓄電池 大幅増加~増加 大幅増加~増加
CCUS 大幅増加~増加 大幅増加~増加
資源 一般炭 やや減少~減少 減少~大幅減少
原料炭 中立 やや減少~減少
鉄鉱石 中立
天然ガス・LNG 中立 中立
ニッケル 大幅増加~増加 大幅増加~増加
増加~やや増加 増加~やや増加
輸送 増加~やや増加 増加~やや増加
船舶 増加~やや増加 大幅増加~増加
航空機 大幅増加~増加 大幅増加~増加
素材 鉄鋼 鋼材 中立 中立
鋼管 増加~やや増加 中立
セメント 中立 中立
化学品 中立 中立
アルミニウム 中立 中立
不動産 オフィスビル/集合住宅販売 中立 増加~やや増加
その他 森林 増加~やや増加 増加~やや増加
  • 鉄鉱石の2050年の値は、シナリオに十分なデータがないことから記載なし

当社の事業環境・方針・取り組み

当社事業の事業環境は、 NZE、APS、STEPSシナリオにおける2050年時点において、全体の約9割が中立・増加に位置づけられ、当社事業の関連市場の将来需給予測は、総じて横ばい、あるいは拡大傾向にあることを認識しています。その上で、当社の事業リスクと機会を捉え、対応を行うことで、着実にポートフォリオシフトを推進していることを確認しました。以下には、参照シナリオの需給傾向の変化が相応に大きい当社事業の主な方針・取り組みを紹介します。

【参照シナリオの需給変化傾向:「減少~大幅減少」該当事業】
  • 石炭火力発電:当社は新規の石炭火力発電事業・建設請負工事には例外なく取り組まず、経営資源配分を再エネ等環境負荷の低い発電事業にシフトしていく方針としています。既存の火力発電事業の多くはホスト国との長期契約に基づく事業であり、個別案件の事業性が大幅に悪化するリスクは高くないものと考えられますが、今後も取り巻く事業環境変化を継続的にモニタリングしていきます。
【参照シナリオの需給変化傾向:「大幅増加~増加」該当事業】
  • 再生可能エネルギー発電:当社グループは、風力、太陽光、地熱、水力、バイオマス等のさまざまな形態による再エネ発電事業を行っています。2030年までに、再エネ供給規模を持分発電容量ベースで、現在の1.8GWから5GW以上に拡大することを目指しています。
  • 次世代エネルギー:今後需要増が予測されている水素・アンモニア・合成燃料等のカーボンフリーエネルギー関連事業開発を推進し、収益拡大を図ります。蓄電池事業やエネルギーマネジメント事業では、再生可能エネルギー等の活用や、CO2削減に資するシェアリング、蓄電池のリユース等に資する多様な事業を推進しています。また、CCUSは、エネルギーや素材セクター等におけるニーズの拡大を捉えて、新たな事業創出・開発を進めています。
  • 車:EVの普及やMaaS化の進展を好機と捉え、充電ネットワークを擁する駐車場事業の展開等、新たな事業機会の獲得に取り組んでいます。
  • 船舶/航空機:燃費改善や脱炭素・低炭素燃料活用に向けた、船舶・航空機の開発・導入等を推進しています。

なお、その他、「中立」、「増加~やや増加」、「やや減少~減少」該当事業についても、既存事業の推進だけでなく、新たな事業創出を図るための取り組みを推進しています。森林事業については、持続可能な森林経営・木材供給の価値の高まりを捉えて拡大を図ります。また、2050年に向けたトランジション期において、2030年前後で需給変化傾向が異なる一般炭・原料炭事業、鋼管事業、不動産事業については、引き続き市場動向等を注視しながら、着実なポートフォリオシフトの推進を図ります。

戦略:気候変動に関する移行リスクと機会<シナリオ分析>

エネルギーセクター

エネルギーセクター:石炭・ガス火力発電

参照シナリオ(マクロ環境:石炭・ガス火力発電量の変化傾向)

当社の事業環境・方針・取り組み

当社該当事業

石炭火力発電事業、ガス火力発電事業

外部環境認識、リスク・機会

石炭火力発電は、先進国から段階的な縮小が進み、いずれのシナリオにおいても2040年または2050年にかけて大幅な減少となっています。ガス火力発電は、総発電量に占める割合は中長期的に低下するものの、水素/CCUS等、新技術の活用によるCO2排出量の削減検討が進むとも考えられ、エネルギー・トランジションを進める上で、電力安定供給の観点からも引き続き重要な発電手段として一定の供給が求められると考えられます。上記STEPSシナリオにおいては2050年時点でも発電量はわずかながら増加すると見込まれています。

当社の方針・戦略・取り組み

当社は経営資源配分を火力から再エネ等環境負荷の低い発電事業にシフトし、石炭火力については新規の発電事業・建設請負工事には例外なく取り組みません。また2040年代後半には全ての事業を終え、石炭火力発電事業から撤退する方針です。(※1)ガス火力については、エネルギー・トラジションの橋渡し役として電力供給を支えるとともに、再生可能エネルギー発電普及に伴う調整電源としての役割を発揮する重要な発電方式と理解しており、また、カーボンニュートラル達成に向け、グリーン水素の活用を含めた低炭素化の技術革新も期待される分野と捉え、取り組んでまいります。地域社会・経済の発展や安定電源としての電力供給責任を踏まえつつ、既存設備の脱炭素化・低炭素化に向けた検討・取り組みの追求、再生可能エネルギー等への電源シフトに向けたホスト国への最大限の支援等を行いながら、事業撤退の前倒しも排除せずあらゆるオプショ ンを追求し、当社及び社会全体の脱炭素化を図っていきます。当社では、豊富な発電事業のノウハウを生かし、世界各国で高効率・高品質で環境性能にも優れた電力の供給に取り組んでいます。

<<参考値>>

石炭火力発電事業 23/3末 2035年見通 2040年代後半
投融資・保証残高(※2) 3,100億円 1,500億円 ゼロ
持分発電容量 5.2GW 約2GW ゼロ
  1. 石炭火力について、当社は2035年までにCO2排出量を60%以上削減(2019年比)し、2040年代後半には事業を終え石炭火力発電事業から撤退する方針です。
  2. 出資スキームや、契約形態にかかわらず、全ての石炭火力発電事業の投融資・保証残高(完工前の案件は想定ピーク残高)を含んでいます。為替は2023年3月末レート 133.5円/USDを用いて計算。

エネルギーセクター:再生可能エネルギー

参照シナリオ(マクロ環境:再生可能エネルギー発電量の変化傾向)

  • 変化率が100%を超える場合、増加分は100%を超える分のみ記載する形で統一(例)変化率120%の場合、20%増加と記載

当社の事業環境・方針・取り組み

当社該当事業

再生可能エネルギー事業

外部環境認識、リスク・機会

カーボンニュートラル化の潮流の高まりを受け、各国では再エネの主力電源化が加速し、太陽光発電、風力発電、地熱発電といった再エネ発電に加え、グリーン水素向け再エネ需要が増加しています。左記いずれのシナリオにおいても、2050年までに再エネの発電量は大幅に増え、NZEシナリオでは現在の約8倍になると予想されています。

当社の方針・戦略・取り組み

気候変動問題を克服しカーボンニュートラル社会を実現するために、当社グループは、 風力、太陽光、地熱、水力、バイオマス等のさまざまな形態による再エネ発電事業を行っています。地域社会における経済や産業の発展に不可欠なエネルギーを安定的に供給するとともに、経営資源を再エネ等、より環境負荷の低い発電ポートフォリオに継続的にシフトする方針を掲げ、2030年までに、再エネ持分発電容量5GW以上を目指しています。当社は太陽光・風力事業を拡大するとともに、水資源が豊富な東南アジアでの水力発電事業を推進し、地熱資源量が世界第2位のインドネシアにおいて地熱発電事業の運営・開発を進めています。

バイオマスエネルギー開発に関する特集はこちら

エネルギーセクター:次世代エネルギー(水素・アンモニア・合成燃料)

参照シナリオ(マクロ環境:水素供給量・アンモニア供給量の変化傾向)

  • 水素等の供給量には、電力・熱セクターでの水素・アンモニア供給量、低炭素な水素・アンモニア・合成燃料等を含む。
    1EJ(=10^18J)は原油約2,580万kℓの熱量に相当。(EJ:エクサジュール)

当社の事業環境・方針・取り組み

当社該当事業

水素・アンモニア・合成燃料等のカーボンフリーエネルギー開発・展開事業

外部環境認識、リスク・機会

化石燃料の代替燃料として、ライフサイクルCO2削減に寄与する次世代エネルギーの需要が伸びる傾向があります。IEAのNZEシナリオでは、水素・アンモニア・合成燃料等への投資額が2030年までに現在の10倍以上に拡大するとしています。供給側ではすでに、安価に天然ガスや再エネを利用可能なエリアで、水素・アンモニア製造プラントの開発投資がグローバルに計画されており、需要側では産業分野の脱炭素化に向け、欧州や日本、アジア諸国の政府が、水素やアンモニアの利用計画の策定を進めています。一方、事業を立ち上げるには、政策支援の枠組み、技術開発の促進、社会受容性の醸成等が必要となります。

当社の方針・戦略・取り組み

当社では、2021年度にEIIを立ち上げ、重点分野の一つとして、水素・アンモニア・合成燃料等の事業開発を推進し、次世代エネルギーの安定供給確保を通じて脱炭素社会の実現に貢献しながら、収益を拡大していきます。次世代エネルギーの種別に最適技術・コスト低減・導入時期を見極めた上で、サプライチェーン構築を目指すとともに、関連インフラや技術に対する投資を含めて、パートナーとのアライアンスやコンソーシアム形成により機能補完とリスクシェアを行い、事業の競争優位性を確保していきます。

エネルギーセクター:次世代エネルギー(エネルギーマネジメント・蓄電池)

参照シナリオ(マクロ環境:定置型蓄電池生産能力の変化傾向)

当社の事業環境・方針・取り組み

当社該当事業

蓄電池事業、エネルギーマネジメント事業等

外部環境認識、リスク・機会

現状の各国政府目標や政策が推進された場合の電気自動車の販売市場のシェアは、2030年に世界で35%、米国、中国、欧州等の主要市場で50%以上に達すると言われています。また、再エネの増加に伴いエネルギー貯蔵効率の高い蓄電池が一層求められるようになり、エネルギーマネジメントの観点からも市場拡大が見込まれています。こうした動きと併せて、欧州のバッテリー規制等では、蓄電池のリサイクルやカーボンフットプリント開示、トレーサビリティを求める動きがあります。また、バッテリーで用いられる重要な鉱物資源の採掘の地理的分布は偏っており、コバルト、リチウム、ニッケルの価格上昇は、蓄電池価格の上昇をもたらすリスクにつながります。

当社の方針・戦略・取り組み

当社では、再生可能エネルギーの一層の普及への大きな課題である電力系統の安定性の確保について、蓄電池を活用した新たなエネルギーマネジメント技術の事業化を進めています。さらに、気候変動緩和のもう一つの鍵となる、シェアリング事業等のエネルギー需要側におけるエネルギー消費の削減や再生可能エネルギーの活用につながるビジネスを推進しています。具体的には、当社は、自動車メーカーとともにEV用バッテリーのリユースに取り組むフォーアールエナジー(株)を2010年に設立し、新品よりもCO2削減効果の高いリユースバッテリーの活用を実現。自ら事業開発を進めることでコスト管理を厳しく実施し、電力サービス事業からの収入改善を同時に進めることで、戦略的に事業性を確保し、新たな試みの社会実装を進めています。今後は、世界各地での車載用蓄電池のさらなる活用を視野に、蓄電池を解体して資源を再利用するリサイクルモデルへの貢献も検討します。

大型蓄電事業に関する特集はこちら

エネルギーセクター:次世代エネルギー(CCUS)

参照シナリオ(マクロ環境:CCUS導入によるCO2吸収量の変化傾向)

当社の事業環境・方針・取り組み

当社該当事業

CCUS導入事業

外部環境認識、リスク・機会

CCUSは新しい技術のため、現段階での普及は限定的ですが、各国間でのCO2の輸出入に向けた条約の見直しが進められ、欧米等の先進諸国では、補助金や税控除等の支援策を推進しており、投資が拡大しています。NZEシナリオでは、2030年に水素製造設備、石炭、ガス、バイオマス火力発電所、セメント、鉄鋼、化学等の産業施設の新規建設と改修によって多くのCO2回収ニーズが見込まれており、全世界でCCUSの導入は増加していく見込みです。一方で、参照シナリオとは異なりCO2削減の取り組みが全世界的に軟化する際には、マーケットが縮小し、補助金制度の廃止や、設備投資コストが増加する等のリスクが考えられます。

当社の方針・戦略・取り組み

今後、補助金制度の有無は事業の経済性、事業の成立要否そのものに大きく影響するため、すでに補助金等の枠組みが整いはじめている国・地域においては積極的に活用し、早期の案件参画、積み上げを目指していきます。一方で、炭素排出目標の設定、政策の検討を進める国・地域においては、可能な限り政府と連携し法制度の整備に携わることで市場環境を整え、優位なポジションで案件組成することを目指します。また、今後技術革新が見込まれるCO2 Captureにおいては、競争力のある技術を見極め、最適に活用することで事業創出に繋げます。足元ではGlobal Thermostat社のDAC技術(※)に投資を行い、共同での事業開発を進めています。

  • 大気から直接CO2を回収するDirect Air Capture技術。
資源セクター

資源セクター:一般炭

参照シナリオ(マクロ環境:一般炭生産量の変化傾向)

当社の事業環境・方針・取り組み

当社該当事業

上流権益

外部環境認識、リスク・機会

先進国を中心とした多くの国のエネルギー政策において、石炭火力発電はガス火力発電、そして再エネへと転換していくことが計画されていることから、石炭火力発電に用いられる一般炭の需要も減少すると見込まれます。

当社の方針・戦略・取り組み

当社は一般炭鉱山開発事業において、新規の権益取得は行わず、2030年までに一般炭鉱山からの持分生産量ゼロを目指す方針です。当社の資源ポートフォリオにおける一般炭権益の割合は相対的に小さく、現行保有する権益についても、近い将来にマインライフの終了を迎える予定です。また、同権益は需要が相対的に高い高品位炭を産出しており、コスト競争力もあるため、需要減の局面でも一定の価格下振れ耐性を備えています。

2023年3月末 一般炭・原料炭(上流権益)エクスポージャー:1,200億円

資源セクター:原料炭

参照シナリオ(マクロ環境:原料炭生産量の変化傾向)

当社の事業環境・方針・取り組み

当社該当事業

上流権益

外部環境認識、リスク・機会

長期的には、多くの国・地域において炭素税の導入・強化等の政策が進展することにより、CO2排出量の少ない低炭素製鉄法の実用化や、電炉鋼比率の増加に伴い、原料炭の需要は減少することが見込まれます。

当社の方針・戦略・取り組み

CCUS等のCO2回収・貯留技術との組み合わせにより、高炉による製鉄事業は当面維持されることが予想される他、当社が保有する権益は、原料炭の中でも希少性の高い強粘結炭を産出しているため、一定の需要は維持されると考えています。

2023年3月末 一般炭・原料炭(上流権益)エクスポージャー:1,200億円

資源セクター:鉄鉱石

参照シナリオ(マクロ環境:鉄鉱石生産量の変化傾向)

当社の事業環境・方針・取り組み

当社該当事業

上流権益

外部環境認識、リスク・機会

世界の鉄鋼需要は漸増する見込みであるものの、脱炭素化の進展に伴う電炉鋼比率の増加により、原料の一部が鉄スクラップに代替され、鉄鉱石需要が減少する可能性があります。一方で、高炉法・電炉法の双方においてCO2排出量が抑えられる直接還元鉄の需要・生産は増加することが見込まれ、その原料となる高品位鉄鉱石の需要は増加する可能性があります。

当社の方針・戦略・取り組み

当社の鉄鉱石関連事業では、南アフリカやブラジルでの鉱山事業を通じて、中国・日本を中心としたアジアへの資源の安定供給に貢献しています。鉄鋼業の脱炭素化への対応における製鉄法・製鋼法の変化による需要への影響を注視し、電炉鋼比率の増大による影響も見極めながら、引き続き安定供給に向けたアクションを推進していきます。

資源セクター:天然ガス・LNG

参照シナリオ(マクロ環境:天然ガス需要の変化傾向)

当社の事業環境・方針・取り組み

当社該当事業

上流権益、中下流、トレーディング

外部環境認識、リスク・機会

各シナリオにおいて需要の増減幅に大きな乖離があるものの、低炭素社会への移行局面においては、石炭の代替としての発電燃料の他、石油化学製品の原料やアンモニア、輸送用燃料として引き続き重要な役割を果たすと考えています。
短中期的には、特にASEANを中心に需要が増加すると見込んでおり、アジア大洋州(インド含)及び中国でのビジネス機会の増加が期待されます。 また、今後のLNGの主たる供給国・地域が中東、及び米国になる事や、ロシア・ウクライナ情勢の影響もあり、需要国向けのLNGトレードの機会が拡大する可能性もあります。
長期的には、再生可能エネルギー等の普及により、新興国における需要の増加は相殺され、需要は減少傾向になることが見込まれますが、再エネの適地が少ない一部の国・地域では天然ガスの需要が一定程度残る見込みに加え、不稼働時のバランシング機能等、再エネのベストミックスとして天然ガスは引き続き重要な役割を果たすと考えています。

当社の方針・戦略・取り組み

当社では中長期的な目線で戦略地域を絞り、上流のLNGプロジェクト、LNGトレード、中下流事業を組み合わせた天然ガス・LNGバリューチェーンの構築による機会の最大化に取り組んでいきます。 また、CCS/CCUS等の環境技術導入や再生可能エネルギーとのベストミックスを図りながらTransition Fuelの需要を確保しつつ、適切な国・地域へのエネルギーの安定供給へ貢献します。

2023年3月末  ガス・LNG(上流権益)エクスポージャー: 500億円

資源セクター:ニッケル

参照シナリオ(マクロ環境:ニッケル需要の変化傾向)

当社の事業環境・方針・取り組み

当社該当事業

上流権益

外部環境認識、リスク・機会

低炭素化、脱炭素化が進展する際に不可欠となる再生可能エネルギーやEV及び蓄電池等の普及に伴い、中長期的に、二次電池向けニッケルの大幅な需要拡大が見込まれています。

当社の方針・戦略・取り組み

マダガスカル共和国で生産者として事業を推進しており、製品を欧米・日本を含むアジア向けに販売するとともに、さらなる事業機会の創出を図っています。今後も、採掘場の再植林を含む生物多様性保全、鉱山・工場サイト周辺の環境保全を継続するとともに、CO2排出量削減の模索・取り組みを継続し、生産安定・生産量拡大等に取り組んでいきます。

資源セクター:銅

参照シナリオ(マクロ環境:銅需要の変化傾向)

当社の事業環境・方針・取り組み

当社該当事業

上流権益

外部環境認識、リスク・機会

再エネやEVの普及に伴い、銅の需要は中長期的に拡大することが見込まれます。一方で、新規開発鉱山の操業難易度・リスクの高まりや環境保護規制強化等の影響で、供給量拡大が難しくなることが見込まれます。

当社の方針・戦略・取り組み

海外銅鉱山への出資を通じた新規権益取得や既存権益の生産量拡大、及び銅生産バリューチェーン上の川上に当たる銅精鉱生産と川中に当たる銅地金生産・販売事業の強化により、銅製品の安定調達に引き続き貢献していきます。また、鉱山周辺の環境保全への配慮にも引き続き取り組んでいきます。

輸送セクター

輸送セクター:車

参照シナリオ(マクロ環境:乗用車販売台数・EVシェアの変化傾向)

当社の事業環境・方針・取り組み

当社該当事業

完成車の販売、自動車部品の製造・販売、自動車ファイナンス、オートリース、シェアリング、駐車場事業等

外部環境認識、リスク・機会

新興国を中心に乗用車の販売台数は増加し、いずれのシナリオにおいても、燃費規制の強化等に伴い新車販売台数に占めるEVの販売割合が増加することが予想されています。自動車部品については、EV化の進展に伴い内燃機関関連部品の需要が減少していく一方、車体の重量増によるタイヤの需要増が期待されます。また炭素税の導入等の影響で車両価格が高額化した場合には、新車販売台数の減少につながるリスクがある半面、ファイナンスやオートリースといった事業の需要拡大が見込まれます。

当社の方針・戦略・取り組み

当社は完成車・自動車部品の製造・販売のみならず、Maas領域においても幅広い事業を手がけています。EVの普及やMaas化の進展を好機と捉え、北欧の駐車場事業では、EVの普及に不可欠な充電ネットワークを拡大し、かつ駐車場を活用したEVサブスクリプションサービスを拡充することで新たな収益源を獲得しています。また、日本では通勤用の車のEVフリート化、職場充電設備、太陽光発電サービスの提供等新たな事業機会の獲得に取り組んでいます。なお、EV化に伴い需要の減少が見込まれる内燃機関関連部品については、当社部品製造事業の数%にも満たないことから、財務的な影響は限定的であると考えます。
また、自動車部品製造事業では部品製造・ 輸送時等における低炭素・脱炭素技術の活用やカーボンフリーエネルギーの利用等、OEMによるサプライチェーンを含むカーボンニュートラル化へ貢献すべくさまざまな取り組みを推進・検討しています。

輸送セクター:船舶

参照シナリオ(マクロ環境:海運需要・船舶/航空燃料消費に占める低炭素燃料割合の変化傾向)

 
  1. シナリオ上でデータの更新がなされていないため、昨年度の評価・数値を引用

当社の事業環境・方針・取り組み

当社該当事業

造船、船舶トレード、船舶保有・運航、船舶用バッテリー販売等

外部環境認識、リスク・機会

モーダルシフトの進展等に伴い、海運需要は中長期的に堅調に増加していくとみられています。またIMO(※2)や各国当局によるGHG排出規制や課税等により低炭素技術への投資負担や運航コストが増加する可能性がある一方、ゼロエミッション/低炭素船(※3)や船舶用バッテリーのニーズが高まることが予想されます。

当社の方針・戦略・取り組み

各国の法規制や市場、ゼロエミッション/低炭素船の技術やコストの動向をモニタリングしながら、規制の将来的な導入等を見据え、造船事業の製品ラインアップや保有船ポートフォリオにおける低炭素船の比率の引き上げに向けた取り組みを進めています。また、大型外航船舶の燃費改善や小型内航船舶のゼロエミッションの実現に寄与する船舶用バッテリーについては、高い世界シェアを誇るCorvus Energy社との合弁事業を通じ、日本での販売を強化していきます。こうした取り組みを通じ、社会の脱炭素化・低炭素化に向けた新たな事業機会を創出していきます。

  1. International Maritime Organization:国際海事機関
  2. LNG燃料船、メタノール燃料船、アンモニア燃料船等

輸送セクター:航空機

参照シナリオ(マクロ環境:航空需要・船舶/航空燃料消費に占める低炭素燃料割合の変化傾向)

 
  1. シナリオ上でデータの更新がなされていないため、昨年度の評価・数値を引用

当社の事業環境・方針・取り組み

当社該当事業

航空機リース・エンジンリース、部航空機部品の製造、航空機パートアウト・リサイクル、カーボンクレジットの売買等

外部環境認識、リスク・機会

航空需要は中長期的に増加することが見込まれています。また、ICAO(※2)やIATA(※3)による規制や国際航空におけるカーボン・オフセットスキーム(CORSIA)の運用開始等により低燃費機体へのシフトが進むとともに、SAF(※4)をはじめとする低炭素燃料の導入量やカーボンクレジットの需要が増加し価格が上昇することが想定されます。

当社の方針・戦略・取り組み

主力となる航空機リース・エンジンリース事業においては、より燃費効率に優れた新型航空機・エンジンへの入れ替えを進め、新規や機材入れ替えのためのリース需要を獲得することで持続的な売り上げ拡大を図るとともに、脱炭素に取り組む顧客(航空会社)の取り組みに貢献しています。引き続き、航空機の低燃費化にかかわる法規制・市場・技術動向をモニタリングしながらポートフォリオをシフトさせていくことで、リース料や保有機体価格下落のリスクをコントロールし事業環境変化に柔軟に対応していきます。
2022年には、退役した航空機を解体しその部品を販売する航空機パートアウト・リサイクル事業へも進出しました。限りある資源・エネルギーの有効活用ならびに廃棄物の排出削減を通じ、循環経済の構築を目指します。また需要の高まりが著しいSAF等バイオ燃料の製造・供給事業への取り組みを強化する等、カーボンニュートラルへ向かう社会における事業機会の獲得に努めています。

  1. International Civil Aviation Organization:国際民間航空機関
  2. IInternational Air Transport Association:国際航空運送協会
  3. Sustainable Aviation Fuel:植物や廃油等から作った持続可能な航空燃

航空機アフターマーケット事業(パートアウト・リサイクル事業を含む)に関する特集はこちら

素材セクター

素材セクター:鉄鋼

参照シナリオ(マクロ環境:鉄鋼生産量・石油・天然ガス投資額の変化傾向)

 
  • シナリオ上でデータの更新がなされていないため、昨年度の評価・数値を引用

当社の事業環境・方針・取り組み

当社該当事業

鉄鋼製品(鋼材・鋼管等)の加工・販売事業

外部環境認識、リスク・機会

鋼材については新興国の牽引により、需要が伸びることが見込まれています。鋼管については、石油・天然ガスの需要動向や投資額がシナリオ間で大きく異なり、短期的にはいずれのシナリオも石油・天然ガス投融資額の増加もあり需要の拡大が見込まれますが、NZEシナリオでは2050年にかけて同投資額は約48%減少すると想定されています。
気候変動が深刻化し、社会からの脱炭素化の要求が高まった場合、環境負荷の高い一部鉄鋼製品の需要が減少する一方、水素による直接還元製鉄やCCUS等の低炭素・脱炭素技術を活用した鉄鋼製品に対する需要が増加すると想定されます。また、グリーンエネルギー等の普及に伴う新たなインフラ設備(製造設備や保管設備等)や運搬手段の導入に伴い、各種鋼材やCCUS等の脱炭素や再エネ開発用の鋼管の需要も増加することが考えられます。

当社の方針・戦略・取り組み

当社が手掛ける事業には製鉄工程は含まれていないため自社のCO2排出量は限定的です。鋼材については、新興国を中心とした需要の成長を着実に収益につなげつつ、低炭素・脱炭素製鋼の需要へのシフトを捉えるべく、エンジニアリング・造船・重工メーカー等の主要取引先やパートナーと連携して事業開拓を進めていきます。
鋼管については、NZEシナリオを前提とした場合、石油・天然ガス開発向けの鋼管需要は減少する一方、上述の低炭素・脱炭素に向けた鉄鋼需要が増加することが見込まれ、これに対応し得るポートフォリオに組み替えていきます。また、当社単独のみならず、戦略パートナーシップを有する総合エネルギー企業等とのエネルギー・トランジション関連ビジネスを推進するとともに、CO2排出量の削減に寄与する石油・ガス井掘削効率化にも貢献していきます。

素材セクター:セメント

参照シナリオ(マクロ環境:セメント生産量の変化傾向)

当社の事業環境・方針・取り組み

当社該当事業

セメント流通事業

外部環境認識、リスク・機会

世界のセメント需要は主にインドやアフリカ諸国の都市化・工業化や成熟国を中心としたグリーンエネルギー等の新たなインフラ設備の導入拡大に伴う需要の増加が見込まれています。気候変動緩和が進む場合にはより効率的な材料使用への重点的な取り組みにより、セメント需要の増加幅は小さくなるものの全体としては横ばいとなることが見込まれています。
CO2排出量の多い従来型のクリンカを用いたセメントに対する脱炭素化を進める規制の導入等によるコストの増加や需要の減少リスクがある一方で、低炭素な製造方法を用いて製造されたセメントの需要増加といった機会があります。 

当社の方針・戦略・取り組み

当社はセメント流通事業を手掛けており、セメントの製造工程は含まれていないため、自社のCO2排出量は限定的です。セメント製造における燃料のクリーンエネルギーへの転換や主原料である石灰石を他の原料で代替した低炭素なセメントの流通量増加の伸びを捉えるべく、市場の変化に応じた販売戦略を展開していきます。また、クリーンテック企業とも協業し、クリーンなセメント製造技術の検証やその技術を用いた関連製品の展開の検討についても取り組んでいます。

素材セクター:化学品

参照シナリオ(マクロ環境:化学品生産量の変化傾向)

当社の事業環境・方針・取り組み

当社該当事業

製造、トレーディング

外部環境認識、リスク・機会

再生可能エネルギーやエネルギー関連インフラの拡大に伴い、化学品の需要が高まると考えられます。一方で、主な原料に石油・ガスの精製によって生じるナフサが用いられますが、長期的なエネルギーの脱炭素化の中で、今後原料となるナフサの供給量が減少することが想定されます。加えて、石油化学製品は、合成・分解の工程で使用される化石エネルギーから大量のCO2が排出されることから、使用エネルギーの再生可能エネルギーへの転換等製造工程の低炭素化を求められることが想定されます。

当社の方針・戦略・取り組み

脱炭素に関する顧客からの要請、関連技術動向等をモニタリングするとともに、バイオマス原料の活用やCCU(CO2の利活用)による化学品製造等の事業機会の開拓を進めていきます。また、石油化学品原料・製品市場の需給変化を調整するグローバルトレードにも引き続き取り組んでいきます。

素材セクター:アルミニウム

参照シナリオ(マクロ環境:アルミニウム生産量の変化傾向)

当社の事業環境・方針・取り組み

当社該当事業

製錬事業

外部環境認識、リスク・機会

アルミニウムはその軽さやリサイクル性の高さから、自動車の軽量化による燃費向上等、社会の低炭素化に欠かせない金属であり、需要の拡大が見込まれます。一方で、一次製錬工程で多量の電力を消費することから、今後の低炭素・脱炭素化が進展した社会においては、電源の再生可能エネルギー化等、CO2排出量を抑えて製造したグリーンアルミニウムの需要が高まることが見込まれます。

当社の方針・戦略・取り組み

当社が手掛ける東南アジアにおけるアルミニウム製錬事業は主に水力由来の再エネ電力を利用していることから、将来の炭素価格リスクは限定的であり、中長期的に競争力を維持できると考えています。そのため、今後、最終需要家から、サプライチェーンを通じた脱炭素化の要求が高まることは、当社の強みを発揮するビジネスチャンスと捉えています。更なるグリーンアルミニウムの権益の積み増し、及び取り扱い量の拡大を通じた競争力強化に向けて取り組んでいきます。

不動産セクター

不動産セクター:オフィスビル、集合住宅販売

参照シナリオ(マクロ環境:商業/住居ビルフロア面積・建物回収率の変化傾向)

当社の事業環境・方針・取り組み

当社該当事業

オフィスビル、商業施設、住宅、物流施設の開発・運営、不動産ファンド事業

外部環境認識、リスク・機会

不動産セクターは、新興国、途上国の人口増加や都市化、ならびに既存建築物の改修が進むことによる需要の増加が見込まれています。一方で建築物におけるエネルギー消費量の削減がCO2排出量の削減には大きな課題となっています。
国内においては、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、2030年以降の新築物件についてZEH・ZEB基準と同水準の省エネ性能が求められていく等、エネルギー効率の上昇によるCO2排出削減が求められます。それらに対応できない場合には、運営コストの増加を通じた不動産価値の下落や需要の減少リスクがある一方で、それらへの対応によりZEH・ZEBに適合した建設物の需要増や不動産価値向上による収益の増加の機会が あります。

当社の方針・戦略・取り組み

当社は、さまざまな不動産の開発・運営を手掛けておりますが、それぞれにおいて、顧客の需要動向や技術動向を踏まえ、スマートメーターやEMS等、新築物件への最新設備の導入や既存物件の設備更新の実施によりエネルギー効率の改善を継続的に図るとともに再エネの導入を進めています。また、入居テナントとも協力し環境に配慮した取り組みの実施にも努めています。環境認証の取得やZEH・ZEBの物件開発にも取り組んでいきます。

その他

その他:森林

参照シナリオ(マクロ環境:森林面積の変化傾向)

  • PRIのFPS・RPSシナリオはそれぞれIEAのAPS・NZEシナリオと温度帯が近似
    ーPRIのFPSシナリオ(2100年1.8°C未満上昇)は IEAのAPSシナリオ(2100年1.7°C上昇)と近似の温度帯
    ーPRIのRPSシナリオ(2100年1.5°C上昇)は IEAのNZEシナリオ(2100年1.5°C上昇)と近似の温度帯

当社の事業環境・方針・取り組み

当社該当事業

森林事業

外部環境認識、リスク・機会

カーボンニュートラル化の潮流を受けて、国連やCOP26、各国政府により森林破壊や土地劣化の停止、森林の保護・面積の増加等に関する多くの目標が設定されており、左記いずれのシナリオにおいても2050年までには森林面積が増加すると見込まれています。
こうした中、違法伐採や森林減少を引き起こす活動へのモニタリングが強化される一方、持続可能な森林経営・木材供給の価値が高まると考えられます。
また将来的には、森林が生育過程でCO2を吸収することを評価した、炭素除去クレジットや、持続可能な伐採を通じた環境負荷の低い林産物を用いて石油化学品等を代替する需要も高まると見込まれ、こうした分野においては各国・各企業による投資・開発競争が激化していくことが考えられます。

当社の方針・戦略・取り組み

当社では、2022年に持続可能な森林経営及び林産物の調達に関して、「森林経営方針」及び「林産物調達方針」を策定しました。
上記方針に則り持続可能な森林経営を前提として森林事業を拡大すること、従来型の林産物の供給に加えて、CO2の吸収・固定・利活用に資する新たな商品・事業を開発していくことに取り組んで参ります。

ニュージーランド森林事業に関する特集はこちら

【将来見通しに関する免責事項】

本内容に記載された予測及び将来の見通しについては、本内容の発表日現在までに入手可能な情報、一定の前提や予測に基づくものです。そのため、実際の業績、結果等は、今後の経済動向、市場価格等のさまざまな不確定要素によって大きく異なる可能性があります。掲載された情報の誤り及び掲載された情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社及び情報提供者は一切責任を負いかねます。

戦略:気候変動に関する物理的リスクと対策

当社では、当社グループの物理的リスクの影響を受けるセクターや事業を特定し、その対応状況を毎年点検しています。特に、屋外に大きな事業拠点や操業に大量の天然資源を要する等の事業については、評価ツールを用いて、物理的リスクの影響度を分析し、個別に対応状況を確認しています。

【当社におけるリスク項目の洗い出しと対応状況】

当社グループは世界各国で幅広いセクターに係る事業活動を行っていることから、UNEP FIの物理的リスクが生じる主要セクターへの影響を記載しているレポート等を参照の上、下表の通り、影響が大きいと考えられる当社のセクターごとの主なリスク特性と、当社の関連する主な事業を特定しています。本年は、森林を対象に追加しました。
物理的リスクは、事業活動に継続的・慢性的影響を与える慢性リスク(平均気温の上昇、降水パターンの変化、海面の上昇等)、突発的な被害を発生させる急性リスク(暴風雨・洪水・干ばつ・森林火災等の異常気象の激甚化等)に大別され、生産拠点の設備や労働条件に関する直接的影響や、原材料・製品の幅広いサプライチェーンへの間接的な影響等、さまざまな影響をもたらす可能性があります。当社は幅広い分野・地域で事業を展開する中で、当該地域の天候や地理的要因等による事業への影響に関する投資時の確認、事業参画後の継続的なアセスメント、契約上の責任範囲の明確化、損害保険契約等により、それらリスクを管理しています。

セクター 各セクターにおける物理的リスクの影響認識 左記のリスクに関連する主な事業
慢性 急性
エネルギー 水不足に伴う操業効率低下や操業の中断、 海面上昇による水没リスク等 洪水や暴風雨に伴う設備の損害や操業の中断等 東南アジア・中東・アフリカにおける火力発電、国内外の風力発電、国内のバイオマス発電、太陽光発電等の再生可能エネルギー発電事業等
資源権益 気温上昇や水不足に伴う、生産効率低下、操業中断、海面上昇による水没リスク等 洪水や暴風雨に伴う設備の損害や操業の中断等 北米、南米・豪州・アフリカ等における鉱山事業、東南アジア・中東におけるエネルギー権益事業、それら資源・エネルギーの販売事業等
素材 気温上昇や水不足に伴う、生産効率低下、操業中断等 洪水や暴風雨に伴う設備の損害や操業の中断、 原材料・生産物輸送の遅延等 金属製品、輸送機及び輸送機部品、化学品、資材等にかかわる製造・加工・販売事業等
輸送 水不足に伴う生産効率低下、操業の中断等 洪水や暴風雨に伴う設備の損害や操業の中断、 原材料・生産物輸送の遅延等 輸送機・輸送機部品の製造・販売事業等
不動産 気温上昇に伴う、工期遅延や水光熱費等のコスト上昇、海面上昇に伴う資産価値低下等 洪水や暴風域に伴う工期遅延、建物の損傷・浸水に伴う資産価値低下等 オフィスビル事業、商業施設事業、住宅関連事業、物流施設事業等
農業 気温上昇や気候変化に伴う生産効率低下等 暴風域・洪水・干ばつの発生に伴う操業の中断等 農業及び食品の輸入・卸売、小売販売事業等
森林 気温変動に伴う生育環境の変化等 自然災害による森林資源の資産価値の低下等 ロシア・ニュージーランドにおける森林事業

【影響を受けやすい事業のリスク分析結果と対応状況】

物理的リスクにはさまざまなリスクが含まれますが、前ページで特定した当社の物理的リスクの影響を受けるセクター・事業のうち、屋外に大きな事業拠点を持つ、または、操業に大量の天然資源を要する等の観点から、物理的リスクの影響を受けやすいと考えられる事業について、より詳細なリスク分析を行いました。
発電事業、資源・エネルギー権益事業、不動産事業、農業に加え今年度は森林事業も対象に、主要拠点の所在地情報等を基に、主に水ストレス、洪水・海面上昇、気温上昇、森林火災の影響に関して、 2100年までに産業革命以降4℃上昇想定のIPCC(※1)によるRCP8.5シナリオ(※2)を参照した評価ツール等を用いて、事業の実態等も踏まえ、リスク分析を行いました。当該事業についても、地域の天候や地理的要因等による事業への影響に関する投資時の確認、事業参画後の継続的なアセスメント、契約上の責任範囲の明確化や、損害保険の付保等により、適切にリスク管理を行っていることを確認しました。

セクター 分析結果と対応状況
エネルギー 発電事業について水ストレスを分析したところ、水不足の懸念が生じる可能性がある地域が含まれていますが、冷却用に多量の水を使用する当社火力発電事業における事業用水は、海水や発電プラント内の造水設備により賄われており、水不足による操業中断等のリスクは大きくないと判断しています。
資源権益 資源権益事業において水ストレスや継続的気温上昇のリスクを確認したところ、長期的に35℃以上の高温日が増加する、また水不足の懸念が生じる可能性が相対的に高い地域が含まれていますが、地理的条件等を踏まえ災害リスクの評価や、気温その他条件に十分配慮した適切な労働条件の設定、損害保険の付保等によりリスクのコントロールに努めています。
不動産 不動産事業において、開発検討時には各所在地における洪水リスクを十分に調査分析し、ハザードマップや個別案件の具体的条件等から保守的にリスクを評価した上で案件を選別しております。また、各案件の開発推進においては、物理的リスクへの方策を実施することでリスクの極小化を図っており、事業ポートフォリオ全体としてのリスクは深刻ではないと捉えています。
農業 農業の主要生産拠点について、拠点所在国の気温上昇や水ストレスを分析したところ、35℃以上の高温日が増加する、また水不足の懸念が生じる可能性がある地域が含まれており、上記影響により作物の品質・収穫量等に影響が生じた場合には各拠点の操業状態に悪影響が生じる可能性がありますが、当社事業においては、生産物・生産地域を分散させているため、全体のパフォーマンスとしては、ある程度のリスク耐性を備えているものと考えています。
森林 森林事業について、 森林火災リスクを分析したところ、現状当社が保有する森林資産についてはリスクが低いことが確認されました。当社保有森林においては火災防止計画等に沿った施策に取り組んでおります。TNFD(※3)に基づく情報開示におけるリスク分析では、ニュージーランドにおける当社森林資産を取り上げて洪水等も含む自然災害リスク全体として分析しております(分析結果詳細はTNFDベータ版フレームワークに基づくトライアル分析をご参照ください)。
  1. Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル
  2. Representative Concentration Pathway:産業革命以降、2100年までに4℃上昇を想定したシナリオ
  3. Taskforce on Nature-related Financial Disclosures:自然関連財務情報開示タスクフォース。自然資本及び生物多様性に関するリスクや機会を適切に評価し、開示するための枠組みを構築する国際的な組織
株式会社ディ・エフ・エフ

リスク管理

  • 当社グループの活動は広範な分野、地域に分散した事業から成り立ち、さまざまな社会課題と関わりを持っています。当社は、常にそれら社会課題に配慮し、グループ全体の事業活動から生じる社会・環境への影響を適切にコントロールするために、「環境方針」「人権方針」「サプライチェーンCSR行動指針」「贈賄防止指針」「コンプライアンス指針」等の方針を設定し、グループ内で周知・徹底を図っています。
  • 当社は、新規事業を検討・実施する際の審査過程において、社会・環境に関するリスクの評価や対応策の確認を行っています。特に、気候変動問題に関しては、気候変動等の社会・環境問題に起因する事業環境の変化に適切に対応出来ないことにより、事業の持続性が妨げられるリスク(及び機会)について、以下のような点を確認しています。
    • 規制の導入による影響
    • 技術の変化による影響
    • 気候変動緩和や気候変動への適応の進展による事業の拡大や業績の改善余地
    • 気候の変動あるいは自然災害・異常気象の頻発による影響
  • 既存事業に関しても、当社は社会・環境関連リスクを含む、各事業におけるこれらリスクの全般的な管理状況を定期的にモニターしており、個別事業に関するリスク管理に加え、当社全体が抱える社会・環境に係るリスクの状況を把握し、経営の戦略的判断に活用できる体制を整えていきます。
  • これらの新規事業・既存事業に関する気候変動リスク管理の強化として新たにインターナルカーボンプライシング制度を導入しています。新規事業の検討・実施に際しては、1.5℃シナリオ等(NZEシナリオ(※)等)を使用した分析を行い、脱炭素化が進行した社会における潜在的なリスク・機会の把握やそれへの対応策の検討につなげています。また、当社全体についてのCO2排出量とその潜在的コストやCO2削減・吸収量とその潜在的便益を把握し、経営判断に活用しています。
  • また、気候変動リスクへの対応については、各営業組織において、関連する事業分野の規制の導入や市場変化を把握し事業を展開することに加えて、全社ポートフォリオ管理の一環として、サステナビリティ推進部が気候変動に関する世界的取り組みや各種規制の動向を踏まえた、当社グループの主要なリスクの状況をまとめ、定期的に経営会議、取締役会に報告しています。ポートフォリオ全体で見て許容できないリスクがあれば、リスク管理担当組織と共同でエクスポージャーの削減を含め対応を検討します。
  • Net Zero Emission Scenario:国際エネルギー機関による世界全体での2050年ネットゼロ達成(産業革命以降、2100年までに1.5℃上昇)を想定したシナリオ。
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指標と目標・実績

指標と目標

目標:カーボンニュートラル化への取り組み

当社グループは、気候変動問題に対する基本方針として、以下を掲げています。

  • CO2排出量を、2035年までに50%以上削減(2019年比)
    【発電事業】CO2排出量:40%以上削減(石炭火力発電は60%以上削減)
    【化石エネルギー権益事業】CO2排出量(※):90%以上削減
  • 石炭火力については、新規の発電事業・建設工事請負には取り組まない、石炭火力発電事業は、2040年代後半には全ての事業を終え撤退する。一般炭鉱山権益の新規取得は行わず、2030年の一般炭鉱山持分生産量ゼロを目指す。
  • 再生可能エネルギー供給の拡大[2030年までに5GW以上]
  • 他者のエネルギー資源使用に伴う間接排出量

指標:カーボンニュートラル化に向けたインターナルカーボンプライシング活用指標

当社グループは、当社や社会のカーボンニュートラル化の取り組みの推進に向けて、気候変動による将来の潜在的な事業リスク・機会への影響を把握し早期に対応を行うため、炭素排出コスト、環境価値、CO2削減貢献量を指標として活用しています。

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カーボンニュートラル化の対象範囲(2022年実績)

カーボンニュートラル化の対象範囲(2022年実績)

実績

CO2排出量

(千t-CO2e)

指標 2019年度実績
(基準年度)
2022年度実績 削減率 2035年削減目標
全体 59,939 52,572 ▲12.3% 50%以上
発電事業(※) 43,126 42,613 ▲4.0% 40%以上
うち、石炭火力発電(※) 34,452 34,853 1.2% 60%以上
化石エネルギー権益 15,808 9,203 ▲41.8% 90%以上

発電事業の稼働済案件、及び化石エネルギー権益に係る実績は第三者機関のアドバイスを受けて算定

  • 建設中案件の推計値を含む。

持分発電容量

(MW)

指標 2020年3月末時点
(基準年度)
2023年3月末時点
石炭火力 5,240 5,208
ガス火力 3,011 2,994
再生可能エネルギー(※) 1,397 1,771
全体 9,651 9,974
  • 住友商事51%出資のファンド運営会社が運営するファンドが保有する持分容量を含む。

再生可能エネルギー 持分発電容量

(MW)

指標 2019年実績
(基準年)
2022年実績 2030年目標
再生可能エネルギー(※) 1,397 1,771 5,000以上
  • 住友商事51%出資のファンド運営会社が運営するファンドが保有する持分容量を含む。
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国内再生可能エネルギー事業を通じ、地域の発展と地球環境に貢献

6カ所の太陽光発電所、2カ所の風力発電所を運営

太陽光、風力、バイオマス、地熱といった再生可能エネルギーを使用する発電所の中で、いま日本で最も発電量が多いのは太陽光発電です。メガソーラーと呼ばれる大規模な太陽光発電所の建設が各地で始まったのは、再生可能エネルギー固定価格買取制度がスタートした2012年のことでした。

住友商事は、1990年代から、家庭用ソーラーパネルに利用されるポリシリコンなどの素材を海外から輸入する一方、日本のメーカーが製造したソーラーパネルを海外に輸出するビジネスも手掛けていました。

その後、欧州、米国でのメガソーラー事業へ参画し、2012年以降、日本国内での太陽光発電事業に乗り出しました。現在は全国6カ所で太陽光発電事業を運営しています。

風力発電所の建設が国内で本格的に始まったのは、太陽光発電よりも早い2000年代初頭でした。当社は風力発電の黎明期(れいめいき)である04年に風力発電所の運営を開始。現在は、茨城県鹿嶋市と秋田県男鹿市の2カ所で運営を続けています。

サミットウインドパワー鹿嶋風力発電所写真
鹿島灘に面した埋立地一帯に立地。風車のタワーには、鹿島アントラーズや企業ロゴが掲示(サミットウインドパワー鹿嶋風力発電所)
男鹿風力発電所写真
男鹿市は年間平均風速が毎秒6メートルを超える場所が多く、風力発電に適している(男鹿風力発電所)

南相馬の太陽光発電所を福島復興のシンボルに

太陽光発電の最も新しい取り組みは、東日本大震災で大きな被害を受けた福島県南相馬市での発電容量92メガワットの大型メガソーラーの開発です。津波による大規模被害を受け、地盤が沈下した沿岸一帯の土地を有効活用するために、震災1年後の2012年に地元自治体などの協力を得て、発電所建設の計画に着手しました。その後、幾多の障害を乗り越えて、第一期工事は18年3月、第二期工事は18年12月より商業運転を開始しています。

福島県は、40年を目途に県内のエネルギー需要を100パーセント再生可能エネルギーでまかなう目標を立てています。東京ドーム32個分に相当する広大な土地に設置された2つの太陽光発電所は、同目標の推進力となるばかりでなく、いまだ途上にある被災地復興のシンボル的存在でもあります。

建設した発電所を長期にわたって運用し、固定価格買取期間が終了したのちも、環境に優しくコスト競争力のある電力を社会に継続的に供給していく。それが住友商事のビジョンです。実現のために最も重要なのは、地元の人々との信頼関係です。地域住民に受け入れられ、長く愛される施設となって、初めて、数十年にわたる長期運用が実現可能となります。

第一期工事・真野右田海老発電所写真
第一期工事・真野右田海老発電所
第二期工事・原町東発電所写真
第二期工事・原町東発電所

グループ内連携で最適な電力マネジメントを実現する

太陽光発電や風力発電は、気象状況によって電力供給が左右されるという弱点があります。その弱点をカバーし、電力供給を安定化させるために、蓄電池等を活用し、最適な電力マネジメントを実現していくこと。さらに、グループ内で大型バイオマス発電所を保有・運営し、その電気を使って電力小売ビジネスを手掛けるサミットエナジーなどと連携しながら、需要家に継続的かつ安定的に電力を届けていくことが、これからの住友商事の再生可能エネルギー事業の目標です。

第2期工事・原町東発電所写真
現地での定例会では、関係会社でパネル点検を実施(第2期工事・原町東発電所)

新たな再生可能エネルギー発電所を開発中

日本政府は、2030年に国内電力消費における再生可能エネルギーの比率目標を引き上げ、最大38パーセントとしました。当社グループは、カーボンフリーエネルギーの開発・展開を進め、30年までに再生可能エネルギー供給を300万キロワット以上とする中期目標を掲げています。目標達成に向け、21年3月に着工した宮城県仙台市でのバイオマス発電所や22年4月に着工した福島県田村市、大熊町、浪江町、葛尾村にまたがる陸上風力発電所の建設を進めるとともに、高知県土佐清水市、三原村での陸上風力発電事業など新たな再生可能エネルギー発電所の開発を日本国内で進めています。

そして、昨今世界からも注目されている国内洋上風力発電、再生可能エネルギーを地産地消する地域エネルギー事業など、新たな領域も射程に入っています。

当社は今後もこれまで長年にわたり積み重ねてきた太陽光、風力、バイオマス発電の運営経験を生かし、日本における再生可能エネルギー発電の発展や持続可能な社会の実現に貢献していきます。

株式会社ディ・エフ・エフ

インドネシアの電力供給を支える地熱発電

気象の影響を受けにくい再生可能エネルギー

地熱発電は再生可能エネルギーを利用した発電方法の一つであり、基本的な仕組みは、火山の地下などにあるマグマの熱によって温められた地下水の蒸気でタービンを回し、発電を行うというシンプルなものです。化石燃料を必要としないため環境負荷が低く、燃料市況に電力価格が左右されないこと、太陽光や風力発電など気象の影響を受けやすい他の発電方法と比べて、安定した電力を得られることなどが大きな特徴です。

一方で、地熱発電は地中深く井戸の掘削を進めなければ、発電に利用できる十分な蒸気が得られるかどうか分からないというリスクを伴っています。実際2,000~3,000メートルの井戸を掘り進めたのちに、十分な蒸気が得られないことが分かり、発電プロジェクトが頓挫してしまうこともあります。地表からの調査ノウハウ、掘削開発のための資金と時間、さらには多少の運を必要とするのが地熱発電事業なのです。

ウルブル発電所写真
ラヘンドン発電所写真
ウルブル生産井からの集蒸気配管(左はウルブル発電所、右はラヘンドン発電所)

世界第2位の「地熱大国」インドネシア

発電インフラのビジネスモデルは、大きく「EPC」と「IPP」の2つに分けられます。EPCとは、発電所の設計(Engineering)、調達(Procurement)、建設(Construction)を受託する建設工事請負のことです。EPCでは、通常完成した施設を現地政府や企業に納入した時点で完了します。IPPは独立系発電業者(Independent Power Producer)を意味し、事業者は発電施設のオーナーとなって継続的に売電を行います。

住友商事は、将来の電源多様化を見据え、地熱発電が大型化・実用化された黎明期から着目し、1970年代に関連設備の納入を開始しました。世界第2位の地熱資源を有するインドネシアでは、1995年に地熱発電への取り組みを開始し、1997年に初の地熱発電所EPC案件を受注、今日まで計12案件(計17ユニット/総発電量約900メガワット)に関わってきました。これは、同国における地熱総発電容量の43パーセントを占め、日本の総合商社ではトップの実績です。

当社が多くの受注実績を持つ要因の一つに、パートナーシップの力があります。当社は地熱発電所用蒸気タービン製造の最大手である富士電機との協業に加えて、土木・据え付け工事や現地調達を担当するインドネシアのレカヤサの協力を受けて、数々の地熱EPC案件を成功させてきました。当社が近年手掛けた代表的なEPCには、スラウェシ島北部のラヘンドン地熱発電所、スマトラ島南部のウルブル地熱発電所などがあります。

ウルブル発電所写真
ラヘンドン発電所写真
地熱発電所の多くは、山奥の未開の地。ウルブル発電所があるスマトラ島では、スマトラタイガーと遭遇する恐怖とも戦った(左はウルブル発電所、右はラヘンドン発電所)

粘り強く進めたIPPプロジェクト

インドネシア初となる当社の地熱IPPプロジェクトは、2011年にスタートしたスマトラ島西部のムアララボ地熱発電事業です。

地熱発電所の建設は、一般に火山近くの未開の地で、手つかずの山地を切り拓くところから実際の開発はスタートします。とりわけムアララボは、最も近い空港から陸路で4~5時間を要する極めてアクセスの悪い場所です。12年3月、当社がパートナーと共に出資する現地事業会社はインドネシア国営電力会社と30年間の長期売電契約を締結し、インドネシア財務省からの政府保証を得たのち、現地で試掘開発に着手しました。

しかし、試掘の結果、当初見通しより発電規模を縮小せざるを得ない事態となり、政府および国営電力会社とプロジェクトの諸条件について再交渉を行いました。再交渉の妥結には2年弱を要しましたが、政府・国営電力会社・事業者がお互いに納得できる内容で合意することができ、その後発電所建設のファイナンス組成に取り組みました。最初の長期売電契約締結から5年後の17年3月にようやくファイナンスクローズを達成し発電所の建設を開始しました。

この発電所建設において、当社はEPCも請け負いました。「当社にとってインドネシア初の地熱IPPプロジェクトを期限通りに完工して、インドネシアの電力供給に貢献する」という目標に向け、他のIPPプロジェクトで培った事業者としてのノウハウのみならず、豊富な地熱EPCの経験も生かし、当社電力ビジネスの総合力をもって完工を目指しました。そして、19年12月、無事商業運転を開始することができました。

インドネシアにおいて日本企業が試掘前の最も初期の段階から海外地熱鉱区を開発した前例はなく、インドネシア国内の制度が未整備な中でプロジェクト諸条件の交渉やファイナンス組成に時間がかかりましたが、無事に発電所の完工を実現し、次のプロジェクトにつながる土台を築くことが出来ました。現在、ムアララボ発電所の拡張プロジェクトや同じスマトラ島における次の地熱IPPプロジェクトであるラジャバサ地熱発電事業の開発を進めています。

ムアララボ発電所の生産井掘削現場写真
ムアララボ発電所の生産井掘削現場と全景
ムアララボ発電所の生産井掘削全景写真

2030年までに地熱発電容量を2.5倍に

世界第4位の2億7,000万人を超える人口を擁し、年率5パーセント前後の経済成長を続けるインドネシアでは、再生可能エネルギーへのシフトと安定的な電力供給が国家的な課題となっています。インドネシアが有する豊富な地熱資源を利用した地熱発電は、この2つの課題を同時に解決する有効な手段として認識されており、同国政府は、現在の2,400メガワットの地熱発電容量を、2030年までに5,800メガワットに増やす計画を立てています。そして当社には、過去20数年間に及ぶ地熱発電所建設とムアララボ地熱発電事業の経験を生かし、この計画の実現に寄与していくことが期待されています。

地熱発電事業には、他の電源開発にはない特有のリスクが存在します。当社はこれまでに蓄積してきた知見・ノウハウをもとに、政府系機関、金融機関などと連携し、リスクをマネージしながらインドネシアの低炭素化社会の実現に寄与していきます。

地元民との交流写真
地元民との交流写真
地元民との交流写真
現場では良好なコミュニケーションが非常に大切。地元民との交流や現地での雇用にも力を入れている
株式会社ディ・エフ・エフ

欧州における数々の洋上風力発電プロジェクトに参画

欧州で急速に導入が進む洋上風力発電

EUは、2030年までに域内のエネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を少なくとも32パーセントにまで高めるという目標を掲げています。さらに、欧州委員会が21年7月に発表した政策パッケージでは、この比率を40パーセントまでに引き上げようという提案がありました。中でも欧州で急速に導入が進んでいるのが、海上に設置した巨大な風力タービン(風車)で電気を起こす洋上風力発電です。ノルウェー、デンマーク、ドイツ、オランダ、ベルギー、フランス、英国などに囲まれた北海を中心とした海域における風力発電所建設が、現在急ピッチで進められています。

洋上風力発電の最大のメリットは、風を遮る山や建物が一切ないことです。そのため、風の力を効率よく発電に結び付けられるだけでなく、発電量の予測も立てやすいという特長があります。

また、施設を建設できる広大なスペースがあることから、制約の多い陸上と異なり、大型風車の輸送が容易であることも洋上風力発電の大きなメリットです。特に北海は、沖合40キロメートル以上まで遠浅が続く、風力発電所建設に非常に適した地形を持ちます。

洋上の風車写真
白鷺(しらさぎ)との別名を持つ、洋上の風車

ベルギーで4つのプロジェクトに参画

住友商事が洋上風力発電事業に参入したのは2014年にさかのぼります。

ベルギーの洋上風力発電事業者であるパークウインドとの戦略パートナーシップの下、北海における稼働中・建設中・開発中の案件であった「ベルウインド」「ノースウインド」「ノーベルウインド」にそれぞれ事業参画しました。

そして18年8月、新たにパークウインド社との4件目の共同事業となる「ノースウェスター2」に事業参画し、20年5月に無事完工しました。近年、欧州洋上風力市場では、技術革新による風車の大型化が進んでおり、本事業では運転中のものでは世界最大級となる風車を使用しています。

これらの巨大な風車群を建設し運転するには、安定した資金力に加え、プロジェクトを確実に遂行するマネジメント力、オペレーション力が求められます。当社は、火力発電所の建設・運転の経験、さらに北米、中国、南アフリカにおける陸上風力発電事業のノウハウを生かして、ベルギーで洋上風力発電プロジェクトを成功させてきました。

洋上の風車写真
据付船に降り注ぐ北海の朝日。昼夜問わずに建設は進む
洋上に凛とそびえ立つ変電所写真
洋上に凛(りん)とそびえ立つ変電所

欧州で拡大するプロジェクト参画 ベルギーから英国、そしてフランスへ

欧州における住友商事の洋上風力発電事業の拠点は、ドイツのデュッセルドルフを中心とし、ベルギーのルーベン、英国のロンドン、フランスのパリにあります。当社は、発電事業者として現地にしっかり根を下ろしながら、総合商社ならではのネットワークを駆使して情報を集め、常に新規事業の可能性を探ってきました。

2016年、17年と英国での洋上風力発電プロジェクト「ギャロパー」「レースバンク」に立て続けに参画できたのも、ベルギーでのプロジェクトが評価されたことに加えて、現地での地道な活動があったからです。ベルギーのプロジェクトを上回る大規模な英国の2つの風力発電案件は、「レースバンク」が18年3月、「ギャロパー」が9月に完工、その運転フェーズにおいても、ベルギーでの経験が生かされています。これに引き続き、当社は「ギャロパー」の拡張案件である「ファイブ・エスチュアリーズ」の開発に取り組んでいます。

18年にはベルギー、英国に引き続き、フランスでも洋上風力発電プロジェクト「ル・トレポール」「ノワールムーティエ」に事業参画しました。「ル・トレポール」は英仏海峡洋上沖合約15キロメートル、「ノワールムーティエ」はフランス・ビスケー湾沖合約12キロメートルの海域において開発予定で、現在ファイナンスクローズ(※)達成を目指しています。この両プロジェクトの総発電容量は合計992メガワットで、約164万人分に相当する電気を供給します。

このように欧州の洋上風力発電市場は年々拡大の基調にあります。今後、将来の普及が見込まれる浮体式洋上風力発電プロジェクトも含め、欧州各国でのプロジェクトに参画し、事業を拡大させていくことが当社の目標です。これまで各国政府からの補助金によって支えられてきた再生可能エネルギーのビジネスモデルが、昨今補助金なしで自立できるビジネスモデルに急激に変わりつつあり、発電の安定性を高めながら、コスト面での優位性を追求し、欧州市民に向けて電力を継続的に供給していくことを目指しています。

  • 「ファイナンスクローズ」:プロジェクトへの融資契約を締結し、貸し出しに関する要件を満たすこと
洋上の風車写真
時に海は厳しい顔を見せるが、それでも風車は回る

アジア地域での展開の可能性も

欧州以外の地域では、アジア、オセアニア、北米も洋上風力発電の好適地として世界から注目されています。

アジアでは、風力資源の豊富な広い海洋があるという地形上の利点があり、政府が再生可能エネルギーを重視する姿勢を鮮明に打ち出している日本に加え、ベトナム等も注目を集めています。北海のように遠浅の地形ではないこと、台風が多いことなど課題はあるものの、欧州での洋上風力発電事業の経験が日本を含むアジアやオセアニア地域で生かされる機会が近い将来にやってくると当社は考えています。

洋上の風車写真
時間の移り変わりともに、さまざまに表情を変える風車

再生可能エネルギー事業拡大に向けたファンドの設立

住友商事は、2018年4月より火力発電および再生可能エネルギーを統合し、電力事業にトータルで取り組む体制をグローバルに整備しました。未来に向けて地球環境と共生し、社会に貢献できるエネルギー事業を確立していくこと。それが当社の電力事業の目標です。

19年、住友商事、三井住友銀行および日本政策投資銀行は、共同で出資するファンド運営会社であるスプリング・インフラストラクチャー・キャピタル(SIC)を通じて、1号ファンドを設立しました。日本初の海外洋上風力発電事業投資ファンドであるこのファンドでは、当社が参画する英国の「レースバンク」ならびに「ギャロパー」洋上風力発電所をシードアセット(ファンドの投資対象資産)として組み入れました。また22年には2号ファンドを設立し、国内太陽光発電所をシードアセットとして組み入れています。

SICを通じて、機関投資家に対して国内外の再生可能エネルギー発電資産への投資機会を提供するとともに、再生可能エネルギーを中心とした世界のインフラ整備に貢献していきます。

環境との共生と、電力に支えられた快適で心躍る生活を両立させるために、当社は再生可能エネルギー事業を力強く推進していきます。

株式会社ディ・エフ・エフ

サステナブルな木材資源をグローバル市場へ

自ら森林を経営して世界のカーボンニュートラル実現へ貢献

木材は計画的に伐採と育林を繰り返すことで、永久に再生が可能な循環資源。人間にとっては最も身近な資源の一つでもあります。住友商事の木材ビジネスは、日本に木材を輸入して高度経済成長を支えたことから始まりました。2000年代には森林経営にもビジネスの幅を広げ、よりサステナブル(持続可能)な森林資源の確保と活用に取り組んできました。

さらに、自ら経営する森林から生み出される木材製品の供給を、市場が成熟し、大きな成長が期待しにくい日本だけではなく、今後の拡大が見込まれる世界各国へと広げています。

森林にはCO2を吸収し固定する機能があり、適切な管理・伐採を通じて世界のカーボンニュートラルに貢献できます。当社が保有・管理する森林でも環境に配慮した伐採活動を実施しており、持続可能な森林経営を行っています。今後は、これまで培ってきた森林経営に関する知見・ノウハウを活用しながら、さらにグローバルな森林資源拡大に取り組んでいきます。

ニュージーランドの木材輸出港写真
ニュージーランドの木材輸出港

ニュージーランドでは植林によるサステナブルな森林経営を実現

当社は2013年3月に、ニュージーランドの森林を獲得し、サミット・フォーレスト・ニュージーランドとして事業展開しています。ニュージーランド北島にある、約5万ヘクタールの森林で育つラジアタパインと呼ばれるマツの原木が、中国をはじめとしたアジア地域に向けて輸出されています。

森林の経営は、間引きや枝打ちといった育林の手間や、山火事や暴風被害などのリスクも抱えます。さらに伐採した木材を運び出すための、道路や港などのインフラ整備も必要となるにもかかわらず、当社があえて自ら森林経営に携わるのは、長期にわたって木材の安定供給を維持するためです。

ニュージーランドの森林で生息する野生の馬の写真
生態系に配慮して経営するニュージーランドの森林では野生の馬が生息する

サミット・フォーレスト・ニュージーランドでは、木を“植えて、育てて、伐採する”、地球環境に配慮した木材資源の供給が、30年サイクルで行われています。

この森林では、これまで林業に従事してきた地元住民を雇用。森をよく知る彼らにより、伐採や植林、育林などの作業が効率よく分業され、1年間に約60万立方メートル(25メートルプール約900個分)の木材を出荷しています。野生の馬が木々の間を駆け抜ける、そんな自然の姿が保たれているのも特長です。

木材の単なる売買ではなく、その土地にしっかりと根づいた手法で森林経営を行う当社の姿勢は、現地でも高く評価されています。また、植林地における地形の把握や伐採面積の確認といった伐採オペレーションにドローンや衛星写真を活用するなど、先進技術も積極的に取り入れています。

ニュージーランド北島の林区の写真
ニュージーランド北島の林区保有面積は約5万ヘクタールと広大
株式会社ディ・エフ・エフ

再生可能エネルギー関連事業

中長期的にエネルギー供給の担い手として成長が期待される再エネによる発電事業に参画し、気候変動の緩和に貢献しています。

(2023年3月31日現在)

燃料 発電所 発電容量(MW)
太陽光 大阪ひかりの森プロジェクト 日本 10.0
ソーラーパワー西条 日本 29.0
ソーラーパワー北九州 日本 16.0
ソーラーパワー苫小牧 日本 15.0
ソーラーパワー南相馬・鹿島 日本 59.9
ソーラーパワー南相馬・原町 日本 32.3
EVM/EVM2 スペイン 14.0
タンロン工業団地・第二タンロン工業団地・第三タンロン工業団地 ベトナム 25.1
風力 男鹿風力発電所 日本 28.8
サミットウィンドパワー(鹿嶋) 日本 20.0
阿武隈風力発電所 日本 147.2
大唐中日(赤峰)新能源 中国 50.0
Stanton Wind Energy 米国 120.0
Cimarron ⅡWind 米国 131.1
Ironwood Wind 米国 167.9
Dorper Wind 南アフリカ 100.0
Mesquite Creek Wind 米国 211.2
Amunet エジプト 500.0
洋上風力 Northwind ベルギー 216.0
Nobelwind ベルギー 165.0
Northwester2 ベルギー 219.0
Galloper イギリス 352.8
Race Bank イギリス 573.3
木質バイオマス サミット半田パワー 日本 75.0
サミット明星パワー 日本 50.0
サミット酒田パワー 日本 50.0
仙台港バイオマスパワー 日本 112.0
地熱 Muara Laboh インドネシア 85.0
水力 CBK フィリピン 792.0
株式会社ディ・エフ・エフ

国内外不動産事業における環境関連認証の取得及びグリーンボンドの発行

当社不動産事業では、環境・社会・ガバナンス(以下「ESG」)に係る基本的な方針を定め、実践しています。当社グループの住商リアルティ・マネジメント(株)では、不動産運用会社として投資判断・運用プロセスへESGの要素を組込んでいくことが、中長期的な投資家の価値最大化に不可欠であると考え、SOSiLA物流リート投資法人をはじめとする同社運用中ファンド物件において、CASBEE、DBJ Green Building、LEED、BELS等の不動産性能評価を取得しています。また、SOSiLA物流リート投資法人(以下「本投資法人」)は、2022年に実施されたGRESBリアルエステイト評価において「5スター」、ESG情報開示の充実度を測るGRESB開示評価において「A」評価を取得しました。本投資法人は、J-REIT初の取り組みとして、IPO当初からグリーンファイナンス・フレームワークの策定を行う等、グリーンファイナンスによる資金調達を通じて、ESGに配慮した資産運用を推進しています。2023年6月には、ESG投融資に関心を持つ投資家層の拡大を通じた資金調達基盤の強化を目指すため、30億円のグリーンボンドを発行しました。グリーンファイナンスで調達した資金は、以下のいずれかの適格クライテリアを満たすグリーン適格資産の既存若しくは新規資産の取得資金(取得予定を含む)、グリーン適格資産の改修工事資金またはそれらに要した借入金(グリーンローンを含む)・投資法人債(グリーンボンドを含む)の返済・償還資金に充当されます。

<適格クライテリア>

  • グリーンビルディング
    下記のいずれかの認証を取得済又は今後取得予定の物件
    • CASBEE認証におけるB+ランク、Aランク、又はSランク
    • DBJ Green Building認証における3つ星、4つ星、又は5つ星・BELS認証における3つ星、4つ星、又は5つ星
    • LEED認証におけるSilver、GoldまたはPlatinum
  • 工事改修
    保有資産に係る、以下のいずれかをみたす改修工事
    • CO2、エネルギー、水等の使用量または排出量の削減等、環境面において有益な改善を目的としたもの
      (従来比10%以上の使用量または排出量の削減効果が見込まれるもの)
    • 上記適格クライテリアを満たす環境認証の取得、再取得、または1段階以上の改善
  • 省エネルギー
    • 設備空調機器の更新、照明器具のLED化及び蓄電システムの導入に関する費用
      (従来比10%のエネルギー削減効果が見込まれるもの)
  • 再生可能エネルギー
    再エネ発電設備の取得または設置
    (なお、保有物件の敷地内または屋上に設置するものをいいます。)

住商リアルティマネジメント(株)運用中ファンド物件における主な環境関連認証の取得状況(2023年7月時点)

取得認証 物件名称 評価
CASBEE:9物件 SOSiLA横浜港北 Aランク
SOSiLA相模原 Aランク
SOSiLA春日部 Aランク
SOSiLA川越 Aランク
SOSiLA西淀川Ⅰ Aランク
SOSiLA西淀川Ⅱ Aランク
SOSiLA海老名 Sランク
LiCS成田 Aランク
SOSiLA板橋 建築(新築)Aランク
LEED:2物件 203 North LaSalle PLATINUM
Atlanta Financial Center SILVER
BELS:10物件 SOSiLA横浜港北 ☆☆☆☆☆
SOSiLA相模原 ☆☆☆☆☆
SOSiLA春日部 ☆☆☆☆☆
SOSiLA川越 ☆☆☆☆☆
SOSiLA西淀川Ⅰ ☆☆☆☆☆
SOSiLA海老名 ☆☆☆☆☆
SOSiLA西淀川Ⅱ ☆☆☆☆☆
LiCS成田 ☆☆☆☆
SOSiLA板橋 ☆☆☆☆☆
SOSiLA尼崎 ☆☆☆☆☆
株式会社ディ・エフ・エフ

脱炭素経営の伴走型支援を行う「GXコンシェルジュ」

企業におけるカーボンニュートラルの実現のためにはGHG(温室効果ガス)現状把握⇒GX戦略・施策策定⇒GXソリューション導入⇒評価・見直しを継続して行うGX(Green Transformation)マネジメントサイクルの構築が必要となります。GXコンシェルジュは、重要社会課題である「気候変動緩和」に取り組むべく、当社、アビームコンサルティング、当社グループのSCSKの3社共創にてプロジェクトを促進し、社会のカーボンニュートラル化に貢献していきます。具体的には、GHG(温室効果ガス)排出量算定支援、GHG削減ロードマップ策定支援、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づいた各種情報開示支援等のGX関連コンサルティング機能の提供、太陽光発電やEVのリース事業等、当社グループが保有する多様なGXソリューションの導入、GHG排出量の可視化を行うGHG排出量管理クラウドサービスの導入を顧客のニーズに応じてワンストップで提供する事業です。2022年度よりTCFD提言に沿った気候変動関連の情報開示がプライム上場企業に対して義務化されたこともあり、GX関連コンサルティング事業を中心に、当社の取引先企業に対してすでにサービスを提供しております。

当社グループは幅広い業界のサプライチェーンに深く関与していることから、GXコンシェルジュを通じて取引先企業や事業パートナーとともに気候変動緩和に正面から取り組むことで、カーボンニュートラル社会の実現を目指していきます。

GXマネジメントサイクル
株式会社ディ・エフ・エフ

八丁堀一丁目オフィスビル計画(仮称)ZEB Ready認証取得

当社が共同事業者と開発を進める八丁堀一丁目計画において、2023年6月、当社が開発するオフィスビルとしては初めてZEB Ready認証を取得しました。ZEB Ready認証は、さまざまな省エネ施策を通じて、建物で発生する一次消費エネルギーを、基準エネルギー対比で50%以上削減できる、非住宅建築物に与えられるものです。本オフィスビルでは、外装にLow-Eガラスやライトシェルフを採用し、空調設備の高効率化、室内照度の変更や照明制御装置の追加等を採用することでBEI値0.48(基準比52%削減)を達成し、環境負荷の小さい省エネ建築への取り組みを実現化しました。

八丁堀一丁目オフィスビル写真
株式会社ディ・エフ・エフ

物流施設(SOSiLA)事業でのGHG排出量可視化(GXコンシェルジュ)

当社が開発し、当社(グループ会社含む)及びSOSiLA物流リート投資法人(以下、本投資法人)が保有する物流施設について、脱炭素化に向けた取り組みの参考とするため、GXコンシェルジュを活用し、GHG排出量を算定・可視化しました。これまでSOSiLAシリーズでは、入居企業や本投資法人の投資家に環境性能の高い物流施設を提供するため、環境認証の取得を積極的に進めてきました。今後はさらなるGHG削減の施策として、稼働中の物件においては屋上への太陽光パネル設置等によるグリーン電力の確保、今後建築する案件においては環境性能の高い部材を導入することでライフサイクルGHGの削減に努めていきます。

物流施設の屋上に太陽光パネルを設置した写真
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IT事業におけるグリーンボンドの発行、及び、環境配慮型データセンターの運営

当社グループのIT事業の中核を担うSCSKグループは、事業を通じた社会課題解決により、社会とともに持続的な成長を図る「サステナビリティ経営」を推進しており、優先的に取り組む課題を7つのマテリアリティとして策定しています。マテリアリティである「地球環境への貢献」に資する取り組みとして、2021年6月に50億円のグリーンボンドを発行し、省エネルギー化による環境配慮型のデータセンター(netXDC千葉第3センター)の建設、改修、取得及び運営費用に充当しています。同データセンターは、LED照明や外壁の断熱等と、空調に高効率な空冷フリークーリングチラー(外気による冷却装置を兼ね備えた空調設備)を採用することにより電力量を大幅削減する設備設計としており、2022年5月よりサービスを開始しました。

SCSKグループでは、データセンターを中心に温室効果ガス排出量の削減を目的に省電力化に取り組んできました。今後、さらなる省電力化や自然エネルギーの活用を推進することで、温室効果ガス排出量削減に向けて意欲的に取り組むとともに、環境に配慮した事業活動の実践や、環境に貢献する事業機会の創出を通じて、脱炭素社会の実現、持続可能な社会の発展に貢献していきます。

netXDC千葉第3センター写真
調達資金の充当対象案件:netXDC千葉第3センター
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西鉄グループとのレトロフィットEVバス事業

当社は、西日本鉄道(以下、西鉄)と既存ディーゼルバスを電動化改造するレトロフィットEVバス事業を展開しています。バス業界でもCO2排出削減は重要課題の一つであり、近年EVバスの重要性が高まっていますが、車両価格が高額なため、現時点で導入状況はまだ限定的です。当社は、この課題解決を目指し、当社出資先のRAC Electric Vehicle社(台湾)のEVバス量産技術を活用し、EVキットは同社から調達し、西鉄グループ傘下の西鉄車体技術(株)にて改造作業を行うことで、低価格のEVバス製造を実現しました。

本事業は、地域社会・経済の発展、循環経済、気候変動緩和等に資する取り組みであり、当社として、この国産レトロフィットEVバスを西鉄及び国内バス事業者向けに導入拡大していくことで、日本のバス業界の脱炭素化に貢献していきます。

レトロフィットEVバス写真
国内で初めて組み立てたレトロフィットEVバス(2023年6月から福岡市で営業運行開始)
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EV×エネルギーマネジメントサービスを提供するHakobune(ハコブネ)を設立

当社は、「EV×エネルギーマネジメント」のサービスを提供するHakobuneを設立しました。Hakobuneは、企業に対し従業員向けの通勤用EV、職場充電設備(以下「WPC(ワークプレイスチャージ)」)をサブスクリプション方式(月々定額)で一括提供し、企業の要望に応じて太陽光発電設備の同時導入にも対応します。働く人々の通勤手段のアップデートと企業の脱炭素化への取り組みを併せて支援すべく、Hakobuneは、自動車が不可欠な地域において、通勤用EV車両、ならびに職場での太陽光充電を可能にするWPC設備を企業及びその従業員に一括提供します。当社はこれまで自動車事業及び電力事業で培ってきた経験を活かし、Hakobuneの事業を通じて、カーボンニュートラルへの取り組みを加速させつつ、働く人々に快適なモビリティライフを提供することで、地域社会・経済の発展を実現します。

ハコブネの事業のイメージ図
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